『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』は、有名な絵画や音楽、発明と、ビジネス発展の歴史をクロスさせて描いた教養エンタテインメントです。
ダ・ヴィンチ、レンブラント、スティーブンソン、フォード、ケネディ、エジソン、マッキンゼー、プレスリー、ビートルズほか、意外な「有名人」たちが織りなす人間ドラマを読むうちに、会計とファイナンスの知識が自然と身につきます。
「読み始めたら止まらない!」と多くのみなさんが絶賛する本書、ぜひお手にとってご覧ください!

旅のはじめに

 このたびは会計の歴史ツアーへのご参加、誠にありがとうございます。
 はじめに、このツアーの特徴をお伝えしておきましょう。
 本書でご一緒する「会計の歴史ツアー」の特徴は次の2点です。

 ・会計の歴史を物語として表現したこと
 ・簿記、会計、ファイナンスの全体を紹介したこと

 会計の勉強は「細かい計算や用語、手続き」中心であることが多く、歴史観をもって語られることがほとんどありません。
 簿記を勉強している人のほとんどは、簿記がイタリア発祥であることを教わらず、経理担当者は減価償却が鉄道会社からはじまったことを知りません。公認会計士や税理士でもディスクロージャーのはじまりに「JFKのお父さん」がかかわっていることを知る人は少ないです。

 本書は「会計の全体像を、歴史とともに楽しく学べる」内容を目指しました。歴史のなかには意外な学びが隠されています。決算書、国際会計基準、予算や企業価値の誕生した時代を訪ねることで、「会計に対する視野」を広げてもらえると思います。
 経理担当者以外のビジネスパーソン、とくに経営者に必要なのは細かい処理を学ぶことではありません。「そのルールや仕組みが存在することの意味」を知ることのほうが重要です。歴史的な学びは、きっとその理解に役に立つことでしょう。

 私はこれまで数々のビジネススクールや企業研修で会計分野の講師を務めてきました。会計を「大局的に・楽しく」学んでもらうのはとても難しい作業ですが、講義で「歴史」をもちいる手法はかなり効果的でした。会計ルールの誕生エピソードや人物秘話を少々大げさな講談調で語ると、受講者たちが身を乗り出してきます。本書はそんな経験をもとにしています。皆さんにも「好奇心とともに会計を理解する」経験をしてもらえれば嬉しいです。
 本書に細かい数字や計算はいっさい登場しません。会計を学ぶというよりは、エンタテインメントとして、この旅をお楽しみください。

 本書の物語はヨーロッパからアメリカへ向けて進みます。
 それでは皆さま、よき航海を!

本書の構成

 本書の舞台は「第1部:イタリアからオランダ」「第2部:イギリスからアメリカ」「第3部:アメリカ」という順番で進みます。
 第1部には中世イタリアで描かれた「トビアスと天使」と「最後の晩餐」、そして近世オランダで描かれた「夜警」の「3つの絵画」が登場します。これらが描かれた時代に帳簿と会社が登場し、会計の基礎が誕生しました。
 第2部にはイギリスの「蒸気機関車」と「蒸気船」、そしてドイツで生まれた「自動車」の「3つの発明」が登場します。これらの乗り物が登場した時代に資金調達が大規模化し、計算や報告の仕組みが変わりました。
 第3部では「ディキシー」「セインツ(聖者の行進)」「イエスタデイ」の「3つの名曲」が登場します。モノではなくサービスや楽曲がカネを生む時代になって、管理会計やファイナンスの新分野が生まれてきました。
 見覚えのある名画、お馴染みの乗り物、あの名曲がどんなふうに「会計の歴史」とからむのか、ごゆっくりお楽しみいただければ幸いです。

田中靖浩(たなか・やすひろ)
田中靖浩公認会計士事務所所長。産業技術大学院大学客員教授。
1963年三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社などを経て現職。ビジネススクール、企業研修、講演などで「笑いが起こる会計講座」の講師として活躍する一方、落語家・講談師とのコラボイベントを手掛けるなど、幅広くポップに活動中。主な著書に『実学入門 経営がみえる会計』『良い値決め 悪い値決め』『米軍式 人を動かすマネジメント』などがある。