『利生の人 尊氏と正成』をお読みいただいた書店員の方から、下記のような推薦コメントをいただいています。

● 「同じ理想を抱く者たちの対立の描写に、深い悲哀を感じた」
――八重洲ブックセンター 内田俊明氏 

 近年、歴史好きの間で注目されている太平記の時代を、真正面から描いた作品であるが、一読、過去の同様の作品では読んだことのない印象をもった。その要因は、足利尊氏、楠木正成、後醍醐天皇それぞれの描写の新鮮さにある。鎌倉幕府の滅亡後、尊氏と後醍醐・正成は反目し戦うこととなるのだが、本作では、元々は、題名ともなっている「利生」という観点で、その三者の理想は一致しているのである。 「利生」とは何なのかは本書を読んでもらうとして、同じ理想を抱く者たちがしだいに対立してしまうその描写に、深い悲哀を感じた。

●「暗君としての後醍醐天皇像が、見事に塗り替えられていく」
――大垣書店烏丸三条店 倉津拓也氏 

 『太平記』を代表とする「暗君としての後醍醐」像が、最先端の研究成果をもとに見事に塗り替えられていく。
 「利生の人」として描かれる後醍醐天皇、楠木正成、そして足利尊氏。それぞれに衆生の幸福を願う三人が、歴史に翻弄され、バラバラになっていく物語の展開は圧巻。正成と尊氏が酒とともに心を交わす宴の描写と、その思い出が尊氏に後醍醐への反逆を決意させてしまう場面はとても印象に残る。尊氏親子が正成親子の思い出とともに生きていくラストの描写は心に響いた。
 京都の様々な名所が舞台になっており、この本を片手に京都を散歩するのもおすすめ。

●「この時代の歴史物語に、新たな一面を加えた作品」
――教文館 津田篤志氏

 鎌倉時代末期、公家、武家入り乱れての権力闘争で混乱をきわめた世に、利生という理想を実現すべく行動した人物たちがいた。利生とは、衆生に神仏の利益をもたらすこと、即ち人のための世をつくること。
 後醍醐帝、楠木正成、足利尊氏。理想を同じくする三者が相通じる関係で鎌倉幕府を打倒するも、建武の新政以降、利生の世を実現するために、その想いのためにかえって三者が相反してゆく。
 その過程で「あえて」敵対までしてゆく三者の姿を、その「あえて」を描くことによって、この時代の歴史物語に、新しい一面を加えた作品。