『20代で人生の年収は9割決まる。』著者の土井英司さんにニューノーマルの時代に読んでおきたいビジネス書5冊をあげてもらった。日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長で、年間1000冊を読むビジネス書の目利きが薦める本とは──。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、あっという間にオンラインシフトが進んだように、経済環境は突然変化することがある。そんなときに慌てふためくことなくチャンスをつかむには、1.「変化を正しく捉える力」と2.「変化に適応する柔軟性」が必要だ。
 ニューノーマル(新常態)に読んでおきたい本を厳選して5冊、紹介しておこう。

あくまで数字を見つめて行動する

 変化を正しく捉えるには、まっさらな目で事実を見つめる必要がある。ここで2020年のビジネス書1位(トーハン調べ)に輝いた『ファクトフルネス』を挙げるのはあまりに王道だからやめておいて、代わりにロングセラーとなっている『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』を紹介したい。

 本書は、今も愛され続けるサイゼリヤの創業者、正垣泰彦氏がサイゼリヤの経営の秘密を語った一冊。
 東京理科大学出身の著者が、純粋に数字を見つめて発見した事実、それは<5割引きにしても売れないから7割引きにしたら、「客数が1日20人から一挙に600~800人まで増えた」>ということだった。この世界では、消費行動に限らず、ある数値を超えたとき、突然物事が大きく変化するということが起こる。その数値を閾値(いきち)と呼ぶが、サイゼリヤにおけるそれは、「7割」だったのだ。
 現在のサイゼリヤの経営は、だったら7割引きでも成り立つように原価をコントロールすればいい、という思想に基づいている(現在のサイゼリヤは生産者でもあるため、より原価を安くして質の高いものを提供できている)。

 自社の都合で考えるのではなく、数字を通じて真実をつかみ、そこに自らを適応させていく。本書には、そんな経営の定石が書かれている。

『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(著)、日経ビジネス人文庫、2016年

「学歴」ではなく「学力」が必要

 次にご紹介したいのは、読書ブロガーとして知られる読書猿氏が書いた『独学大全』。
 GAFAが学歴不問を打ち出している今、求められるのは「学歴」ではなく「学力」。変化に対応する力を養うには、もはや「正解」や「模範例」を求めていてはいけない。自分の目的に必要な知識を仕入れ、体系化していくための「独学」が必要だ。
 本書には、そんな独学のスキルが、800ページ近くに及ぶ大ボリュームでまとめられている。

 独学にありがちな、「何を、どう学べばいいか分からない」「時間がない」「続かない」などの問題を解決できるよう、工夫されているのが特長だ。
 1/100プランニング、2ミニッツ・スターター、グレー時間クレンジング、習慣レバレッジなど、読者が志や目標を立て、やる気を持続させるためのさまざまな理論やテクニック、さらには調べものをし、知識を体系立てていくための方法論も紹介されている。
 学会発表、論文掲載、書籍執筆でも使える技術がまとめられており、重宝するだろう。

『独学大全』読書猿(著)、ダイヤモンド社、2020年

新しい社会システムの「原理」を学ぶ

 変化の時代に必要なのは、何が新しい時代の「原理」なのかだが、そのうちの1つを紹介した本に『世界は贈与でできている』がある。

 本書は、第29回山本七平賞、奨励賞を受賞した、今注目の若手哲学者・近内悠太氏のデビュー作。資本主義の「交換」の原理がなぜ行き詰まっているのか、なぜ現代に生きるわれわれはこうも生きづらいのか、なぜ未来を創るエネルギーが湧いてこないのか、「贈与」の概念を理解することで、多くの疑問に答えることができるようになる。
 われわれが先人たちから受け取った「贈与」に気づき、感謝することで、未来へと贈与をつなぐ動機が生まれる。資本主義に染まりきったわれわれが、新しい社会システムを創るために、今最も読んでおくべき一冊かもしれない。

『世界は贈与でできている』近藤悠太(著)、NewsPicksパブリッシング、2020年

コロナ禍における観光ビジネスの新トレンドとは

 残り2冊は、ニューノーマルに対応するための企業と個人の指針となる本を紹介しよう。

 『観光再生』は、2019年まで絶好調だったものの、このコロナ禍で大きく修正を迫られた観光業再生のための秘策。
 著者は、国内最大級の観光総合情報サイト「やまとごころ.jp」の運営を手掛ける、やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏だ。「サステナブルな地域をつくる28のキーワード」ということで、サステナブル・ツーリズムやリジェネラティブ・トラベル、地域教育とシビックプライド、マイクロモビリティ、観光型MaaS、バーチャルツーリズム、アドベンチャー・ツーリズム、ロングステイヤー/ワーケーションなど、これからの観光ビジネスの新トレンドとなるキーワードと、その最先端事例を紹介している。

『観光再生』村山慶輔(著)、プレジデント社、2020年

サステナブルな生き方のヒント

 最後に紹介するのは、食品ロス問題のジャーナリストとして広く知られる、井出留美氏による、ニューノーマル時代の生活のあり方に関する本。
 本書『あるものでまかなう生活』には、われわれがサステナブルな生き方をするためのヒントや、SDGsをチャンスに変えるビジネスのヒントが書かれている。
 飲食店の休業で行き場を失った魚を救うべく「オンライン捌(さば)き教室」を企画した三重県の友栄水産、バナナペーパーの名刺を作る北海道・旭川の「北の印刷屋さん(成瀬印刷)」など、企業事例も豊富だ。

『あるものでまかなう生活』井出留美(著)、日本経済新聞出版、2020年
『20代で人生の年収は9割決まる。』
『20代で人生の年収は9割決まる。』土井英司著、日経ビジネス人文庫、2020年

 日系・外資系企業、フリーランス、独立起業と、幅広いワークスタイルを体験した著者が語る、本音のキャリア論。就活生から若手ビジネスパーソン、転職、起業を考える中堅まで。不確実時代の働き方、決定版。

 会社との相性は適切か/「2つのリスト」が身を守る/資格よりも「意外・複雑・多様」/ビジネスの下流で仕事をしろ/年収をあげる転職。3つの考え方/ポジションより「武勲」を狙う……生涯にわたって運用できる、「自分という資産」の磨き方のヒントが満載です。(日経ビジネス人文庫は創刊20周年