ウェブテスト〈クリフトン・ストレングス〉を受けた人の数は、全世界で2,400万人を超えました。このことからも、世界的な関心の高さ――いかに多くの人たちが自分の才能について知りたいと考えているかがわかると思います。

 しかし、テストを受けて「面白かった」だけで終わらせてしまっては意味がありません。〈クリフトン・ストレングス〉が、人の成長を促す強力なツールであることを目のあたりにしてきた私にとって、それは非常にもったいないことだと思います。才能を強みにしようと行動を起こしたときにこそ、真の力が発揮されるからです。

 本書で述べているように、アセスメントの結果としてわかるのは「あなたの才能(すなわち潜在能力)」であって「あなたの強み」ではありません。このことを、私はよく次のように例えています。

 「才能」はダイヤモンドの原石であり、それを磨き上げたダイヤモンドこそが「強み」です。才能は、磨き上げて初めて、常に高いパフォーマンスを生み出す「強み」となるのです。

 ぜひ、本書が示す〈行動アイデア〉を参考にして才能を磨き上げ、目標達成のために日常的に活用し続けていってほしいと思います。

会話から得られる気づき

 〈クリフトン・ストレングス〉は、世論調査から出発したギャラップ社の強みであるインタビューおよびメタ分析と、開発者ドナルド・クリフトン博士の強みである心理学をかけ合わせることによって誕生しました。ともすると、アセスメントそのもの、あるいはアセスメント後に得られるレポートばかりが注目されがちですが、このレポートをもとにして、ぜひ周囲の人たちと「会話」をしてほしいと思います。そこから深い気づきが得られるはずです。

 また、ひとりで行おうとすると3日坊主になりがちですが、仲間がいれば継続できます。ぜひ、チームにも本書の考えを取り入れてみてください。

 〈クリフトン・ストレングス〉は、目の前にいる人の行動や発言の背景にどんな資質があるかを理解し、それをもとにして行動するための非常に有効なツールです。「どうしてできないの?」といらだっていたことも、相手があなたとまったく異なる思考回路や行動パターンを持っていることがわかれば、それほど腹立たしく思わなくなるでしょう。それどころか、相手に感謝するかもしれません。

 チームに〈クリフトン・ストレングス〉の考えを導入すると風通しがぐっとよくなるのは、このためです。日本は同質的な社会だと言われていますが、皆でアセスメントを受ければ、その上位の資質が人によって大きく異なることに気づくでしょう。ひとりひとり違うからこそ、互いに補い合えるのです。相手の資質がわかれば、その人のニーズや意欲の源も予測しやすくなり、結果としてチーム全体のパフォーマンスの向上に役立ちます。

 たとえば、〈活発性〉の高い同僚に「してほしいこと」を聞いてみましょう。「すぐに返事がほしい」と言われたなら、「これまで彼からすぐに返事を求められたのは、自分の仕事が遅いからではなく、彼の〈活発性〉が高いからだ」ということがわかります。まずはメールをすぐに返信するだけでも、仕事が円滑に進みはじめるでしょう。それよりもむしろ、「彼の行動の素早さがチームを救ったこともあったな」と、これまでのことを思い出すかもしれません。

 さらには、レジリエンス(ストレスを跳ね返す力)を高め、あなたらしいマネジメントスタイルを確立するのにも役立ちます。

 自分の資質を受け入れてそれを活用するとともに、部下や同僚の適性に合った役割を課すことで彼らの成長を促すことができれば、過重労働やパワハラも生まれません。自分と向き合うのがつらいときや、部下やチームに対して忍耐力を持ってあたらなければならないときもありますが、これを継続すれば必ず、以前とは違う日がくるはずです。チーム全体のパフォーマンスが向上するだけでなく、あなた自身が大きく満たされていることにも気づくでしょう。

 〈クリフトン・ストレングス〉は、職場だけでなく家庭でも使えます。15歳以上であれば、子どもの潜在能力を特定してそれを育んだり、資質に合った勉強方法を考えるなど具体策に落とし込んだりすることができます。

 子どもが15歳未満でアセスメントを受けられない場合でも、親が自分自身の資質を十分に理解していれば、イライラしたときでも「自分のなかのどの資質がそうさせているのか」を見極めることができるでしょう。自分ならではの子育ての方法を考える際にも役立ちます。

 本書で著者のトム・ラスが述べているとおり、「人の優れた点に関する会話をもっと増やしていこう」――職場や家庭で周囲の人たちの長所やうまくいっているところにフォーカスしたたくさんの会話や行動を進めていってほしいと思います。

2つの注意点

「〈クリフトン・ストレングス〉の結果を自己流で取り入れたが、うまくいかない」という人がときどきいます。次の2つの点に注意してください。

1 レッテル貼りをしない
 「あなたは○○の資質が高いから××だね」「○○が高いから、あなたはこういう人だね」といったレッテル貼りをしてしまうと、その後に待っているのは相手からの反発です。自分勝手なプロファイリングで相手を「こういう人だ」と決めつけたり押しつけたりするのはやめましょう。また、資質はそれ単体ではなく、複数の資質の組み合わせで機能します。組み合わせによって表面に出てくる行動や思考が異なるため、ひとつの資質で相手を決めつけると、その人の可能性を狭めてしまいます。

 大事なことは、相手に問いを投げかけ、返ってきた言葉に耳を傾けることです。相手の話を引き出し、当人が自分自身で道を選択していくためのツールとして〈クリフトン・ストレングス〉を使ってほしいと思います。

2 採用や昇進のための材料にしない
 〈クリフトン・ストレングス〉は、その人の成長やすでに存在しているチームがよりよく機能するために有効な「人材開発」のためのツールです。人材採用や昇進時の材料としては使えません。

 行動アイデアでは「この資質にはこういった仕事が合うかもしれない」という例を挙げていますが、それは「その仕事をする(あるいは役割を果たす)ためには、この資質が必要だ」という意味ではありません。「この資質がないから、その仕事ができないのだ(役割を果たせないのだ)」といった言い訳には使わず、「あなたの上位の資質を使うことで、どうやってその仕事をしようか(役割を果たそうか)」と問いかけてください。

 特に、会社の研修としてアセスメントを受ける際には注意が必要です。「素の自分」ではなく「組織人としての自分」として回答したので、「この資質は本当の私ではない」と思う人もいるようです。〈クリフトン・ストレングス〉の質問項目はそれでも素の自分が回答に現れるよう設計されていますが、本人が疑心暗鬼になるのを避けるためにも、「(アセスメントを受けるのは)より深くその人について理解するためであり、昇進などの材料として使うためではない」ことを事前に明らかにしておきましょう。

 また、うつ病など精神的な不調を抱えている場合は、それが完治した後にアセスメントを受けることをお勧めします。

 それでもうまくいかない場合、あるいはアセスメントの結果が腑に落ちない場合や自分自身のブランディングを確立したいなどという場合には、ストレングス・コーチのセッションを受けるのもよいでしょう。新たな気づきや視点が得られるはずです。実際、腑に落ちない資質のほとんどは誤解によるものです。

 「レポートを読んで、自分のことをわかったつもりでいたが、それははじまりにすぎなかった。こんなに深いとは思わなかった」

 コーチング・セッションを受けた方から、こうした声をいただくこともあります。コーチは、あなたが深層部分で自分を理解し、可能性を広げ、目標を達成するまでずっと、あなたのそばを伴走します。また、職場に〈クリフトン・ストレングス〉を導入する際には、さまざまなアドバイスを提供してくれるでしょう。

 私も講師を務めている〈ギャラップ認定ストレングス・コーチング・コース〉は2015年以降、国内でも定期的に開講されており、多くの認定コーチが誕生しています。サイトにある〈認定コーチ一覧〉を参照すれば、自分に合ったコーチを探すこともできます。

他者に貢献できたときに光り輝く

 さまざまな資質を持つ多くの人の声を聞いてきたからこそ断言できます。どの資質もすばらしいものばかりです。〈指令性〉を持つあなたは、皆が怖気づいたりパニックになったりする状況のなかでもそこに飛び込み、事態の収拾にあたったことがなかったでしょうか。〈自我〉を持つあなたは、「これをやれば、組織や社会の未来がよりよくなる」という思いにかられて、大きな困難が伴うにもかかわらず、あなた自身を疾走させたことがあるはずです。〈競争性〉を持つあなたは、たくさんの強豪がいる厳しい状況のなかでも「絶対に手に入れる」という自らのスイッチを押すことでチームの牽引役を果たしたことがあるでしょう。

 思い出してみてください。あなたの上位資質は、これまでどうあなたの人生に役立ってきたでしょうか。そうすれば、その資質を「強み」に向わせるようにコントロールすることができます。そして、あなたの資質を誰か他者のために使うことができるようになったとき、原石だった資質は磨かれたダイヤモンドのように輝きを放ち、周囲を照らしはじめるでしょう。

 自分にない資質をうらやむのではなく、自分が持つ資質を認めてそれを受け入れたときにこそ、あなたはそれを使ってすばらしい結果を出すことができます。あなたではない他の誰かになるのではなく、自分が持つ資質を磨いてあなたらしさを極めていくのです。自分らしくあることは決して自己中心的なことではなく、自分らしいかたちで誰かのために貢献することなのです。

古屋博子(ふるや・ひろこ)
ギャラップ認定ストレングスコーチ。フラリシュ・コンサルティング(株)代表取締役
ギャラップのストレングス・コーチングコース等の講師も務める。慶應義塾大学大学院で修士号(政治学)を、東京大学大学院で博士号(学術)を取得。2児の母。