パブリックスピーキングは習得しうる “スキル”

 海外で通用するパブリックスピーキング、というと、英語を勉強しなければ!と考える人が多いものです。しかし、ノンネイティブである私たちにとって、ネイティブと対等に話せる英語力を養うのは至難の業。一方でパブリックスピーキングは、習得しうる“スキル”です。

 パブリックスピーキングの極意は、聞いている相手がたった一人の営業相手でも、何百人の聴衆でも、彼らの心を捉えて放さず、心を大きく動かす、ということです。実はそこに言語力はあまり必要ではありません。どの言語を使う場合でも、パブリックスピーキングのスキルの上達にフォーカスすることで、今あなたが持っている言語力のままで、異文化の人相手でも、格段に伝わりやすいスピーチを実現することができるのです。それこそが、グローバル・パブリックスピーキングです。

 本コラムでは、グローバル・パブリックスピーキングのコツをご紹介していきます。

 先日私は、とあるベテランライターの方の講演会に参加してきました。その方はなんと、一時期流行った、「アッシーくん」という表現の生みの親! 少女小説からファッショントレンド記事、ビジネスコンテンツまで、文体を自在に変化させて幅広いジャンルにおいての執筆をなさっている、文才あふれるすご腕ライターです。

 その講演会では、「言葉の着こなし術」と題して、上手な文章を書くためのコツ、をお話しされたのですが、スピーチ構成の技術とあまりにも類似していてびっくり。相手の心に響くメッセージを伝える、という目的は、読み物でもスピーチでも共通していますから、当たり前といえば当たり前です。共通点が多いながらも、紙に落とされた言葉と、口から生で語られる言葉とでは、異なる注意点もあります。

つかみの大切さ

 「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたか頓(とん)と見當がつかぬ。」

 恐らく、日本一冒頭文にインパクトがあり、有名な小説ではないでしょうか。いうまでもなく、夏目漱石の『吾輩は猫である』です。

 小説などの読み物では、冒頭の3文で引きを作ることが大切、といわれているそうです。

 世の中には本は数え切れないほどありますから、その人のその本を読まなければいけない特定の理由は、よほどのことがない限りありません。

 ですから、冒頭部分で、「これは面白そう! もっと読んでみたい!」と期待させることが何よりも重要なのです。有名な作品であればあるほど、冒頭が非常に優れている作品が多く見られます。

 川端康成の『雪国』も同様ですね。

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」

 これはスピーチにもいえることです。

 なぜ、あなたが、その話をしなければならないのか? もしかすると、ビジネスでは、「上司の都合がつかなかったので自分が営業先でプレゼンすることになってしまった」というような場面もあるかもしれません。しかし相手にとってはそんなことは全く関係ありません。聞き手は最初の7秒で話し手が信頼できそうか、印象を決め、30秒でその話し手のプレゼンは聞くに値するかどうか判断する、といわれています。ブレイクスルーで教えている、「7秒-30秒ルール」です。

 そのためには、短く、インパクトのある、さえた表現で意外性をつくことで、一気に相手の心を引き込んでいくことです。どんなことがあっても、「すみません、今日は上司がお休みで私が代わりにお話しさせていただきます」などとプレゼンを始めてしまってはいけません! その瞬間に、あなたのプレゼンの不成功が決まってしまいます。