仕事の「生産性」はドイツ人に学べ
仕事の「生産性」はドイツ人に学べ
隅田 貫 著 / KADOKAWA / 1,512円(税込) / 224ページ

 国土面積はほぼ同じ、GDPでは日本が3位、ドイツが4位と近いことが多く、どちらも第二次世界大戦後は敗戦国からスタートして経済的な復興を遂げたことなど、ドイツと日本がとても“近い”国であったことをこの書籍に気づかされた。そしてまた様々な意味での“違い”も多くあることにも気づかされる。

 本書は、この「違い」を比較しながら「ドイツの人々の仕事の仕方」「人生のとらえ方」「時間の使い方」などについて学ぶことで、現在の日本で多くの企業が直面している「生産性向上」や「働き方改革」へのヒントにしていこうというものである。20年にわたるドイツ勤務経験をもち、現在もドイツと日本の架け橋としての役割を担う著者の経験に基づいた内容は説得力がある。

 実は、私自身もドイツ企業に勤めた経験がある。その時の同僚とのやり取りが、その後の時間の使い方を大きく変えたといっても過言ではない。それまで米国系企業で経験を積んできた自分にとって初めてとなるドイツ企業の日本法人で働き始めた私は、ドイツ本社の社員とも多くのやり取りをした。

 ところが、いざ働き始めてみるとドイツ時間の夕方以降は社員が会社にいない。長期休暇で担当者がいない。これを誰かがとがめることもなく業務が進んでいくことが当時は少し新鮮な驚きでもあった。そして、ドイツ人の同僚からかけられた言葉は「なぜ君は休日にも部下に対してメールをしているの?」であった。

 休日に返信を求めたことはないし、できるだけ早く情報を共有した方がよいという私なりの配慮があったつもりでもあった。私自身が米国企業でそうされてきたように、あまり深く考えずにそうしていたことも事実である。「成果を出すために」が、自分の行動を正当化するための理由であった。だが冷静になって考えれば、夕方以降は家に帰って家族と夕食を取り、人生を豊かにするための休暇を取る彼らのビジネス業績は決して悪くない。それどころか、日本を上回っていたのである。これに気づいて以来、私は仕事のやり方を変えた。

 このほかにも、この企業での経験は私にとって個人の価値観や人生観を中心とする姿勢に大いに学ぶところがあった。これが、すでに17年前の話である。その間、日本ではダイバーシティ、長時間労働の是正、働き方改革などが企業改革のテーマに挙がりながらも個人レベルでは自分事になっていないのかもしれない。

 本書を手に取って感じたのは、確かに我々はドイツから学ぶ、気づく、そしてヒントを得ることが多くあるということである。働き方改革を推進する企業サイドの担当者はもちろんだが、できればそれぞれが「個人」として自らの仕事観や人生観について考える参考にしてほしい、そんな一冊である。

参考書籍

『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人 ドイツに27年住んでわかった 定時に帰る仕事術』(SB新書)
熊谷 徹 著 / SBクリエイティブ / 864円(税込) / 168ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、ほかにて一貫して人事を担当後、2006年法政大学経営大学院修了と同時にアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及) 理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会 理事として活動し、キャリア、働き方、起業についての支援や講演活動に従事。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQアセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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