「人事から今回2度目のパワハラの注意を受けました。3度目は許されないぞとかなり言われて……。でも、どの言動がパワハラになったのか分からないんですよね」

 「自分が若い時に上司から言われていたことを部下に言ったまでですよ。それなのにパワハラなんて、最近の若いやつらは本当に精神的に弱い。でも訴えられたら、こちらが悪いことになってしまう」

 「ちょっと厳しく注意しただけなのに、パワハラなんてひどいですよ。部下との接し方が分かってないから、このコースに参加するように言われて来ました」

 いずれも、私が担当した、管理職のための2日間の「モチベーション・リーダーシップコース」の受講生、50代男性たちの声です。彼らは銀行の支店長、部長職と、部下を何人も持つ立場です。彼らの第一印象は、決して悪いものではありません。昭和の時代を真面目な兵隊として一生懸命頑張り、今のポジションに就いたという責任感と自負を持っています。しかし、研修の様子を見ていると、その言動、態度に昭和のDNAそのままに生きている様子がはっきり分かります。「なるほどね、これが原因か」

 企業はパワハラ研修などで言動の表現ほかの注意喚起を一生懸命やっています。しかし、何を言ったらパワハラか、どんな態度がパワハラかという表現結果ばかりに目が向けられているように感じます。言動集を作ったところで「本人の意識」という根本的なところに目を向けない限り、本人はパワハラを止めることができません。パワハラをしてしまう原因は、昭和の軍隊隊長のDNAなのです。

★昭和の軍隊隊長のDNAチェック(共感するものに○を付ける)
1 モチベーションが低いのは根性がないから
2 モチベーションの高低で結果が変わるなんて甘い
3 落ち込みは心が弱いから
4 仕事は好き嫌いでやるものじゃない
5 仕事はつらくて当たり前
6 心の状態は本人の責任
7 やる気がないのは怠け病
8 結果がすべて
9 仕事に感情を持ち込むべきでない
10 モチベーションは「飲みにケーション」で上がる

 上記の言葉にいくつ共感したでしょうか? これは昭和の軍隊長の人生観が自分のDNAとして遺伝してしまっていないかをチェックするものです。1~3つくらいならまだしも、5つ以上○が付いてしまうとなると、昭和軍隊長のDNAをもらい過ぎ。軍隊長のようなパワハラ言動をメンバーに対して繰り返しやっている状態のはずです。部下が人事に駆け込んだり、メンタル不調で休職したり、ひいては退職してしまったり……。それでも業績が順調だと、自分のせいで引き起こしている悲劇に気づいていない人が多いのです。

自分を正当化しようとする姿は、もはや哀れで滑稽

 「仕事は好き嫌いでやっていいというのか? おかしいだろう。好きな仕事だけやるの? 嫌いな仕事はやらないの? 君たち、それでいいと思っているわけ?」

 某企業の男性上司&女性部下のペア研修「女性が拓く会社の未来、カギを握るのは男性上司」。各人の考えを共有するための時間に、ひときわ大きな声で騒ぎ出した50代前半の部長の発言です。4人テーブルに同席した40代前半の男性管理職と20代の女性部下2名は、ドン引き状態で引きつり笑いをしていました。この部長は、先ほどの昭和DNAチェックでほとんど○が付いてしまったようです。しかし、同席の40代男性管理職は3つ、女性たちはゼロでした。自分が少数派ということで、自分の正しさを強調したくて大声での発言となったようです。