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トップページ医療コラム矢部武の「孤立死」から「自立死」へ定年後を「南国の楽園」フィリピンで暮らす

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.81

定年後を「南国の楽園」フィリピンで暮らす

2019.01.25 ジャーナリスト 矢部 武

65歳以上人口の割合が世界で最も多い日本では高齢者の医療・介護費が増大し、年金受給額が減って老後の生活に不安を抱える「下流老人」が激増中だ。さらに独居老人の増加や家族・社会の絆の希薄化など様々な要因で、高齢者の孤立(死)問題が深刻化している。日本は高齢者にとってどんどん住みにくい社会になっているようだ。

それならいっそのこと、生活費が日本よりはるかに安くて、明るく陽気な人が多く、老人を大事にする文化があり、しかも年間平均気温が27℃と暖かい「南国の楽園」、フィリピンへ移住してみてはどうだろうか。そこで今回は定年後にフィリピンで退職者ビザを取得し、楽しいセカンドライフを送っている人たちを追ってみた。

退職者ビザが簡単に取れる国

定年後に海外移住するには、中高年向けの退職者ビザを取得するのが良い。オーストラリア、カナダ、タイ、マレーシア、フィリピンなど世界20カ国以上が退職者ビザを発行しているが、この中でも特にフィリピンは取得が簡単だという。

フィリピンは外国からの投資や観光を促進する経済活性化戦略の一つとして、外国人の退職者を積極的に受け入れている。観光省直轄のフィリピン退職庁(PRA)が「特別居住退職者ビザ」(SRRV=Special Resident Retiree’s Visa)を発行しているが、主な申請要件はPRAが指定する銀行に米ドルで定期預金を開始することだ。50歳以上で年金がある人は1万ドル(約112万円)を、50歳以上で年金がない人は2万ドル(約224万円)を預けることになる。この預託金は投資への転用はできないが、若干利息を得ることはできる。

フィリピンの退職者ビザの取得要件は他の国に比べてゆるく、例えばマレーシアで50歳以上の人がマレーシアで申請する場合は最低35万MYR(約910万円)の財産証明と、月額1万MYR(約26万円)以上の収入証明が必要となる。

フィリピンでSRRVを取得した外国人は2016年6月時点で約4万5000人にのぼり、そのうち約2000人が日本人だという。

「特別居住退職者ビザ」(SRRV)のIDカード ©Philippine Primer

フィリピンには日本企業の駐在員や元駐在員、定年後に日本から移住した退職者などを支援する団体が複数ある。その一つのPRA日本人倶楽部(以下、日本人倶楽部)は2002年に設立され、フィリピンを第2の生活の場に選んだ日本人の互助や親睦を目的としている。2018年12月現在の会員数は70人強。駐在員で定年を迎えてそのまま住み続けている人と、定年後にSRRVを取得して移住した退職者と半々くらいだという。

日本人倶楽部では毎月1回、会員同士の親睦会を開いているが、これはフィリピンに移住したばかりの新会員にとってありがたいそうだ。というのは、「南国の楽園」を夢見て来たのは良いが、実際に暮らし始めてみると、生活習慣や考え方の違いなどに戸惑ったりすることも少ないからだ。

例えば、フィリピン人は約束の時間に遅れることがよくあるが、そこですぐに「日本人はこんなに遅れるようなことはない」などと怒ってはいけない。フィリピンで快適に暮らすには日本人の習慣や考え方を押しつけるのではなく、彼らのことをよく理解し、お互いにうまくやっていく努力をしなければならないということだ。

問題を抱えた新会員が親睦会に参加して、現地に長く住んでいる先輩たちの話を聞くことで、障害を乗り越える手助けになるかもしれない。新会員としても「定年後はフィリピンで生活する」と日本を出てきた手前、少しくらい問題があったからといって、簡単に帰るわけにはいかないだろう。そこで先輩たちにフィリピンで楽しく暮らす秘訣を伝授してもらうのだという。

PRA日本人倶楽部で毎月行われる懇親会

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コラムニストプロフィール

矢部武 ジャーナリスト

1954年、埼玉県生まれ。米アームストロング大学大学院修士課程修了。1974年に渡米。「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。著書に『60歳からの生き方再設計』、『ひとりで死んでも孤独じゃない~「自立死」先進国アメリカ』、『携帯電磁波の人体影響』、『日本より幸せなアメリカの下流老人』など多数。