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トップページ医療コラム矢部武の「孤立死」から「自立死」へ米国の高齢者の間で「麻雀ブーム」 ~楽しくて認知症の予防に役立つ

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.79

米国の高齢者の間で「麻雀ブーム」 ~楽しくて認知症の予防に役立つ

2018.10.12 ジャーナリスト 矢部 武

中国人に人気の高い麻雀がいま、米国の高齢者の間でブームとなっている。高齢者の自立を支援する公的施設として全米のほとんどの都市に存在する「シニアセンター」のラウンジや、他の高齢者施設などで麻雀を楽しむ人が増えているのだ。

前回の当コラムで取り上げた高齢者支援団体「アッシュビー・ビレッジ(ASV)」でも、「麻雀グループ」が結成されている。麻雀は社会的交流になるだけでなく、加齢によって低下する脳や体の機能を改善し、認知症の予防にも役立つと言われているが、その実態をさぐってみよう。

仲間と麻雀するのは至福の時間

ASVの麻雀グループは複数あるが、そのうちの1つを取材させてもらった。毎週月曜の午後12時~15時まで、グループリーダーのグロリアさんの自宅に高齢女性4人が集まり、麻雀卓を囲んでいる。77歳、84歳、88歳、99歳という年齢を合わせると348歳(平均87歳)になるが、皆さん、実年齢よりずっと若く見える。これも麻雀の健康効果なのかもしれない。

麻雀ゲームの楽しさについて語る高齢女性たち(左はグロリアさん、右は筆者)
麻雀ゲームの楽しさについて語る高齢女性たち(左はグロリアさん、右は筆者)

今から4、5年前にグループを立ち上げたグロリアさんは以前、「ブリッジ」をやっていたが、それをやめて麻雀を始めたという。ブリッジはポーカーなどと並ぶ三大カードゲームの1つで、高齢者にも非常に人気があるが、なぜやめたのか。

彼女はこう説明した。「ブリッジは2人でペアを組んでやるので、片方がミスをすると、相方に迷惑をかけてお互い気まずくなったりします。特に私はミスをすることが多く、そうなるのが嫌でした。でも、麻雀はミスをしても他の人に迷惑をかけることはあまりないので、和気あいあいとした雰囲気でできます」。

グロリアさんによれば、米国では1940年代頃に麻雀ブームがあり、大都市の中産階級の女性などを中心に流行った。当時、彼女の母親も麻雀をやっていて、グロリアさんは若い頃に教えてもらったそうだ。そして彼女はブリッジをやめた後、シニアセンターなどで麻雀をしていたが、いつも同じ仲間とできたらもっと楽しいだろうと思い、ASVでこのグループを立ち上げたという。

私はグロリアさんに「麻雀は脳に刺激を与え、脳細胞を活性化するのに役立つと言われていますが、そう思われますか」と尋ねた。すると彼女は、「脳細胞を活性化しようと思ってやっているのではなく、楽しいからやっているのです。毎週仲間と一緒に卓を囲むのは大きな刺激になります」と答え、他の3人も頷いた。

99歳のジョイスさんは自分で車を運転してやってきたが、このグループに参加する前にシニアセンターでやっていたので、麻雀歴は10年くらいになるという。ジョイスさんにも麻雀をする理由について尋ねると、「ソーシャルタイム(社交の時間)です。仲間と一緒におしゃべりしながら、麻雀するのは至福の時間です。本当に楽しい」と即答した。

一人暮らしの彼女は麻雀の他にASVの映画鑑賞、読書、編み物などのグループにも参加し、ほとんど毎日車で出かけているという。問題は自分で運転できなくなった時だが、その時に備えて麻雀グループの他のメンバーに送り迎えをしてもらうことをすでに話し合っているそうだ。

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コラムニストプロフィール

矢部武 ジャーナリスト

1954年、埼玉県生まれ。米アームストロング大学大学院修士課程修了。1974年に渡米。「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。著書に『60歳からの生き方再設計』、『ひとりで死んでも孤独じゃない~「自立死」先進国アメリカ』、『携帯電磁波の人体影響』、『日本より幸せなアメリカの下流老人』など多数。