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商業施設活用、リース、“官官連携”――宮津市が様々な工夫で公共FMを推進

黒田 隆明【2018.6.15】

商業施設に図書館や子育て施設などを集約、道の駅の飲食施設を3年間のリースでトライアル導入、地域プラットフォームへの参加で市庁舎建て替えの知恵を集める――。京都府宮津市では様々な工夫を凝らして公共施設マネジメントを進めている。

宮津市の過去10年間の投資的経費と公共施設等の将来コスト推計。2015年以降、毎年平均約16.4億円がのしかかる。公共建築物の床面積を20%削減し、建築物と橋梁を長寿命化することで12.2億円まで圧縮できるという(資料:宮津市)

 人口は減少傾向。高齢化率は高まる。財政に余裕はなく、公共施設の老朽化も進む――。多くの自治体が抱える共通の課題だ。京都府北部に位置し、日本三景・天橋立のある街として知られる宮津市(人口約1万8000人)も例外ではない。そうした厳しい状況下で同市は、2016年3月に「公共施設等総合管理計画」を策定。3つの原則を掲げている。

  1. (しっかりと整理を行った上でなければ)新規整備は原則として行わない(総量抑制)
  2. 施設の更新(建て替え)の際には複合化を基本とする
  3. 施設総量を削減する

 とはいえ、従来通りのやり方だけでは、3原則に沿った計画の実現は難しい。宮津市では、挑戦的な手法を公共施設マネジメントの様々な局面で展開している。

民間商業施設に図書館や市役所の一部を移転・集約

 例えば、2017年11月にオープンした「宮津市福祉・教育総合プラザ」。民間商業施設が入居する5階建ての宮津阪急ビル(宮津シーサイドマートミップル、以下ミップル)の3階・4階、約8000m2に、子育て支援・障害者生活支援センター、コミュニティルーム、クッキングルーム、ギャラリー、図書館、市の健康福祉部と教育委員会事務局を集約・複合化している。

「宮津市福祉・教育総合プラザ」が入居するミップル外観(写真:日経BP総研)
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「宮津市福祉・教育総合プラザ」の位置。図書館、子育て施設、市役所の福祉・教育部局を民間商業施設に移転・集約(宮津市の資料を一部加工)
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 子育て支援センターや図書館の充実は「宮津市子ども・子育て支援事業計画」(2015年3月)でも掲げられていた事項だ。図書館は、老朽化していた旧図書館(1971年開館)を移転、面積も約532m2から約2150m2に拡大した。子育て支援機能については「市子育て支援センター」と「げんきっこひろば」をミップルに統合・移転している。さらに、市役所別館に入居していた健康福祉部、教育委員会事務局もミップルに移転させるなど、市の子育て、福祉、教育機能を集約した。

 海岸の埋め立て地区(「宮津市中心市街地沿岸地区」の中心となる浜町地区)に位置するミップルには、ショッピングセンター「さとう」が入居。駐車場を挟んで、観光客だけでなく地元住民の利用も多い道の駅「海の京都 宮津」もあり、人が集まる場所となっている。市では、ここに図書館や子育て支援施設を集めることで、さらなる賑わいの創出も目指す。

 移転後の図書館の出足は好調で、オープン後の2018年1月4日から2月18日までの開館日36日間の入館者数は2万30人で1日平均約556人。これは2016年度の1日平均入館者数(約109人)の5倍以上に当たる。子育て支援センター「にっこりあ」については従前との比較はないが、オープンした2017年11月27日から18年2月18日まで(開館日66日間)で1万302人が利用した。市外から来た利用者が約65%と多いのが特徴で、商業施設や道の駅のある一帯の賑わい創出にもプラス効果が見込めそうだ。

3階の図書館は広くなり「くつろぎコーナー」も設置した(写真:宮津市)
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4階の子育て支援センター「にっこりあ」入口(写真:宮津市)
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 「宮津市福祉・教育総合プラザ」が入居したミップルの所有者である阪急電鉄が無償で貸与している。宮津市では、市が使用する3・4階分の固定資産税と都市計画税は非課税とした。市がリノベーションに掛けたコストは約10億200万円。市では同機能の施設を新築すると約14億円、複合化せずにそれぞれ単独で整備すると18億円程度になると試算しており、コスト面でも大きなメリットが出た。

 ミップルは、阪急電鉄が土地の開発事業提案を経て、宮津市から1992年に土地を取得し、1997年から営業を開始した。ショッピングセンター「さとう」が5フロアを使用していたが、2017年7月の契約更改を機に売り場を再構築し3フロアに縮小することになった。一方、阪急電鉄では、宮津市と周辺地域の活性化策について議論した際に、図書館老朽化の課題や、子育て支援をはじめとする福祉に対するビジョンを市から聞いていた。

 こうした背景から、阪急電鉄は市にフロアを無償で貸与することにした。さとうが返還する3・4階部分を「宮津市の課題の解決・ビジョンの実現に役立てていただくという発想につながっていき、最終的に今般のような姿に至りました」(阪急電鉄不動産部の若杉晋作課長)。

 市に無償貸与するため、阪急電鉄の収益機会にはならないにせよ、「快適な図書館や子育て支援施設には、学生や親子連れをはじめ、様々な人が集まり、これまでミップルになかった新しい賑わいが創出されます。また、そのような施設と日々の買い物の場が近接していれば、利用者の皆様の利便性が高まり、足を運んでいただける機会も増えます」と若杉氏は見る。起点は地域活性化だが、こうした相乗効果が、テナントの事業環境の改善やミップル全体の魅力向上にも寄与すると判断した。

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