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コミュニティの「適応力」で変化に対応――リニア開通に向けたまちづくり(1)

牧野光朗 飯田市長に聞く(前編)

聞き手・構成=平島 寛【2018.7.9】

南信州に位置し、「りんご並木と人形劇のまち」をキャッチフレーズとする人口約10万人の長野県飯田市。ここで、文化経済自立都市構想、航空宇宙産業を中心とする産業創出、新事業創出支援、地域人教育、大学連携によるネットワークなど、先進的な取り組みが次々と生まれている。2027年にはリニア中央新幹線が開通し、中間駅ができる飯田市の注目度は格段に高まる。環境が劇的に変わる9年後に向けて、どう備えるのか。「円卓の地域主義」、「善い地域」を標榜し、地域づくり・産業づくり・人づくりの三本柱で“真の地方創生”を目指す牧野光朗市長に、その根幹となる「共創の場」づくりについて聞いた。

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飯田市長・牧野光朗氏(写真:上野英和)

――市長として市政に14年間携わってきた中で、これまでの手応えと、9年後のリニア中央新幹線開通に向けてのまちづくりのビジョンから教えてください。

  いま4期目で14年間、市政を担わせていただいていますが、様々な取り組みが動き出しているという手応えを感じています。産業振興分野はもちろん、地域医療、人材育成分野などで先進的な取り組みがなされています。これをリニア時代にどのような形でつなげていくかが大きな課題です。リニアが通ると東京(品川)まで45分、名古屋まで25分という立地になります。時間、距離が劇的に短縮され、首都圏も中京圏も通勤・通学圏になります。そうした状況でどんな取り組みが求められるのか。地域で多様な主体を担っている皆さんと一緒に考え、実践していく必要があると思っています。

 当地域はそうした大きな変化に十分に対応できる「適応力」を持っています。これまでの先進的な取り組みも、私一人がトップダウンで決めてきたわけではありません。それぞれの主体がボトムアップで地域の課題に取り組んできました。

――地域の「適応力」とはどのような力ですか。具体例はありますか。

 「適応力」というのは、課題が生じても、手をこまねいて見ているのではなく、ましてや行政に何とかしてくれというものでもなく、むしろ地域全体として考えていこうとするコミュニティの力のことです。飯田市は、この適応力が相当強いと思っています。

  例えば地域医療を南信州地域全体の課題としてとらえ、飯伊地区包括医療協議会が飯田市と周辺13町村によって設立されました。今から45年以上前の1972年のことです。それが機能して産科医不足が懸念された時期においても、医師会と行政が議論を積み重ね、南信州定住自立圏の形成にもつながっていきました。全国的なモデルになった取り組みです。

 また、中山間地域の少子化が進んで、飯田市千代地区では、2つの市立保育園を統合しなくてはならなくなったのですが、そのときには大激論の末、地域の皆さんが、自らの手で社会福祉法人(千代しゃくなげの会)を2005年11月に設立して、そこで保育園の運営もはじめました。すると園児が増え、保育士の定着率もすこぶるよくなりました。

地域コミュニティはコンピューターのOS

――市長は、コミュニティと政策の関係を、コンピューターのOSとアプリの関係に例えていますね。

  OSである「地域コミュニティ」がしっかりしていることが大事です。地域コミュニティというOSが機能していれば、そこに医療、産業、環境といった政策・事業をアプリをとして入れてもきちんと機能するのです。今の全国的な課題は、「アプリである政策で何とか引っ張ろうとしているが、OSである地域コミュニティがガタガタになってしまっているので、うまく機能しない」ということではないかと思います。

――飯田市では、なぜ地域コミュニティというOSがしっかりしているのでしょうか。

  少なくともこの地域では、「公民館」は単なる入れ物ではなく、公民館活動そのものを表している言葉になっていて、みんな平気で「公民館する」「今日は公民館ですから…」って、言うのです。公民館活動が全国的に見ても盛んな地域で、その活動の中核的なコンセプトは「地域を学ぶ」という考え方です。

  地域を学ぶことによって地域を知り、地域の課題を自分事としてとらえ、解決策を考えるという、そういう「当事者意識」と「共創の場」につながる土壌が、公民館活動を通して培われてきました。この公民館活動は戦後、公民館が定着してから脈々と受け継がれてきたと言ってもいいと思います。特に先々代の松澤太郎市長(在職1972~1988)が、公民館の位置付けを定着させていきました。

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飯田市では現在、公民館を地域自治組織のまちづくり委員会の傘下に位置付けている(資料:飯田市)

――飯田市にはそうした土壌があるんですね。

  2004年10月に市長になって翌年、上村と南信濃村を編入し、2007年度に地域自治組織を導入しました。そのときに公民館に関する議論を徹底的に行いました。この議論を通じて確認したのは、コミュニティそのものの在り方です。ボトムアップによる地域自治組織をつくっていこうという方向性が、この時に形づくられました。

  それ以来、10年もやっていると、いろいろな取り組みが地域自治組織の側からも出てくるようになっています。毎年5月下旬から7月にかけて20地区を回り、地域の皆さんとの市政懇談会を開催しますが、陳情型の要望を出す場ではなく、地域の課題を共有し、行政側と地域の方向性を確認していく場になっています。懇談会自体が「共創の場」的な色彩を帯び始めています。

  興味深い事例として、環境美化活動のモデルとなる取り組みとして注目されている竜丘地区の天竜川鵞流峡復活プロジェクトがあります。鵞流峡は舟下りができる天竜川のメインスポットです。ところが、舟下りの運営会社から「観光スポットであるにもかかわらず、竹藪が生い茂ってポイ捨て横行の原因になっている」という話があり、市政懇談会では、地域と運営会社とが一緒に、いわば民民連携で整備を進めることが提案されました。

  その時、ある市民の方が「我々は税金を納めているのだから、行政がやるべきではないか」と主張しました。それはそれで一理あると思いますが、ほかの人から「いや、自分たちの地域なのだから、まずは自分たちでやってみて、それでもできない部分を行政に担ってもらうべきではないか」という意見が出ました。結局、地区の皆さんを中心に整備しようという話になりました。

  この話には後日談があります。整備に一番熱心に取り組んだのは、「行政がやるべきだ」と言った人だったそうです。住民自治はそういうものだと思います。いろいろな意見を活発に出し合っても、方針が決まったら地域住民の一員として取り組んでいくということです。行政はもちろんバックアップしますが、「主体は地域住民」という考え方が浸透しているのです。

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