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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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「農家の母さんだからできることがある」その志が年商2億円の事業へと発展

Vol.08 石垣一子さん(陽気な母さんの店代表取締役社長)

聞き手:麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材・文:熊谷渓子=石山デザイン事務所【2017.1.11】

求められる第二のふるさと観光、グリーン・ツーリズムに注力

――最近は修学旅行生の農業体験を受け入れるグリーン・ツーリズムに力を入れていますね。

石垣 ただ物を売るだけではなく、「この人がつくったものを買いたい」というファンを増やし、農村を残していきたいと考えています。15年は約200回で4000人ほどの体験を受け入れました。農業体験やきりたんぽ作りなどを通じ、食から地域の学びを伝えることを目指しています。

 以前は北海道からの修学旅行生が北東北に来ても、大館市は素通りされることが多かった。でも、観光地ばかりが土地の魅力ではないですよね。この辺りは農村地帯ですから、農業や食を通すことが地域の魅力を伝える第一歩。ありのままの生活に溶け込んでもらうことが、田舎流のおもてなしです。身近なところから地域の特色や歴史を紐解くことに面白みがあります。

 14年には、「大館市まるごと劇団」を旗揚げ。農家の女性たちが秋田弁で演じる、ユーモアたっぷりの芝居が好評です。大館に来なければ会えない母さん、食べられない物、見られない景観、伝わらない想いを知ってほしいです。人と人の自然体な交流が、かけがえのない経験を生み、学びになると思います。

――さらに、農商工連携や広域で連携する動きも出ています。

石垣 せっかく修学旅行生が増えても、農家だけではできることが限られます。特に、修学旅行では大人数の団体を受け入れることになります。05年にここ大館市は1市2町が合併したのですが、その後も旧市町がバラバラで活動していたことに、「もったいない」と思いました。農業体験の他にも、伝統工芸品の大館曲げわっぱや、市が推進するエコリサイクルにも触れてほしい。各地域、各産業の人で一緒に大館市をPRしていこうという考えから、10年に観光協議会、JA青年部、青年会議所、市産業部などと共に官民共同で「まるごと体験推進協議会」を設立しました。修学旅行生の受け入れ窓口を一本化し、体験メニューの幅を広げたのです。「母さんの店」は各施設で体験活動の勉強会や人材派遣を行っています。大館全域の中でそれぞれの得意分野を生かし、訪れた人に少しでも長く滞在してもらうことが狙いです。

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体験工房も併設。この日は首都圏からの参加者にそば打ち体験をしてもらった(写真:大槻純一)
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――新しいことにチャレンジしようという意欲がすごいですね。

石垣 常に話題になって注目されることが、店や地域の元気の源です。みんなで面白がりながら新しい企画を考えていますし、女性だけなので遠慮しないでどんどんアイデアを出すことができます。10年には集落型の農家民宿もスタートしました。修学旅行生に「また来いな」と言って別れるのに、いざ再訪した時に受け入れる場所がないと困ると考えたからです。少しずつ未来の大館ファンのことも考えていかなければいけません。民宿では大人の方にも農村に来てもらいたいと考えています。ふらっと訪れて、農業に触れたり、「母さん」に愚痴をこぼしたり、そんな一種の「ふるさと」のような場所が求められているように感じます。

――事業規模が年々拡大し、15年には株式会社化も果たしました。

石垣 88人で立ち上げた「友の会」の会員も、高齢化の影響から今は69人に減りました。60代、70代が中心です。立ち上げ当初は素人臭さも一つの個性でしたが、いつまでも素人ではいられません。支援者の保証もしていく必要があります。そこで、会員全員が株主となって、株式会社を設立しました。16人のパートの希望者全員を正社員にし、今後は農家や女性に限らず採用の幅を広げて人材を育成していきたいと考えています。私たちの共通の思いは「ずっと陽気な母さんの店を守っていきたい」ということ。その思いを汲んでくれる後継者が交代しやすい環境を整えています。足りない農産物を供給してくれる応援会員の協力も得ています。

 今後は、山菜の作付けにもチャレンジする予定。大館市は山に囲まれており、山菜が豊富です。おいしい旬の山菜を伝えたいので、16年から薬膳料理の勉強も始めたところです。山菜の栽培は難しいともいわれていますが、今まで通り冷静に課題を分析してクリアしていけばいい。私たちが誇りをもつ「農業」の魅力をさらに発信するため、やらなければいけないことは尽きません。

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大館市とネスレ日本が連携、「ネスカフェ キッチンカー」の仕組みを活用して地域課題を解決する「地域活性化プロジェクト」にも参加している(写真:大槻純一)
<インタビューを終えて>
 石垣さんと初めて会ったのは6、7年前だと思います。そのときに、秋田弁で事業を熱く語る石垣さんの、強いリーダーシップと組織マネジメント力に感嘆しました。でなければ、2億円超の事業に育てることはできません。行政を巻き込み、企業と提携し、次々と事業を拡大する石垣さん。その中心にあるのは、安心・安全でおいしいものを届けたいという生産者としての使命と、故郷をこよなく愛する深い郷土愛だということがよく分かりました。
麓 幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員
麓 幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
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