日経BP社は、2009年(第9回)「日経BP・BizTech図書賞」受賞図書を決定いたしました。
日経BP・BizTech図書賞は、技術と経営の進歩や発展に役立つ優れた図書を表彰するもので、日経BP社が2001年に創設した賞です。このほど、審査委員会(委員長・竹内弘高一橋大学大学院国際企業戦略研究科長)が、2009年6月までの過去1年間に国内で著作、発行された図書の中から、受賞図書3点を選出しました。
受賞図書の著者には表彰状と賞金を、出版元には盾を贈ります。
表彰式は10月27日(火曜日)11時から、東京・丸の内の東京會舘で行います。
■受賞図書、受賞者(書名50音順)
『環境問題を経済から見る』 | 福島清彦著 | 亜紀書房 |
『だまされないための年金・医療・介護入門』 | 鈴木亘著 | 東洋経済新報社 |
『日本産業社会の「神話」』 | 小池和男著 | 日本経済新聞出版社 |
■審査委員長の講評
『環境問題を経済から見る』(福島清彦著)は、地球温暖化問題について、政策、技術、経済の視点から、どのように対応すべきかについて示している。市場の失敗、フローやストックの分析など、いくつかの基本的な経済概念を用いて、政策論争をわかりやすく論じている。本書の特色は、EU諸国の政策を現地調査を含めて丹念に調べ上げた点である。「炭素収支」「エネルギー収支」「経済収支」を重視して、新しい環境・エネルギー産業と雇用を創出しているEUから学ぶべきであると論じている。アメリカにおいての旧ブッシュ政権の失策をオバマ新大統領が画期的に転換することを指摘しているが、最近起きた政権交代により日本でも政策転換が可能なことを示唆している点が興味深い。
『だまされないための年金・医療・介護入門』(鈴木亘著)は、公的年金を中心に、医療や介護といった社会保障全体の制度や問題点、改革のあり方をわかりやすく論じている。タイトルは過激であるが、本書では年金・医療・介護保険のいずれも、世代間の公平性が確保されるよう、積み立て方式に変えて、基礎年金を消費税でまかなうという提案を示している。なぜこのような改革が実施されていないのかは、政府、政治家、厚生労働省、社会保険庁等が情報をねじ曲げ、国民を「だましている」ためであるという主張が過激なタイトルにつながっている。わが国の社会保障改革の必要性をわかりやすく、パッションを持って論じたことが評価された。
『日本産業社会の「神話」』(小池和男著)は、思い込み、通説依存の危うさを気付かせてくれた良書である。本書では「日本は集団主義の国」「日本人は会社人間」「日本は長時間労働」「日本の経済発展は政府のお陰」といったいくつかの通説の信憑性を問い、国際比較によってそれらが誤っていることを示している。日本を代表する労働経済学者が実体験もふまえて評論的な論述で従来の主張を展開している点が新鮮である。本書で取り上げた「神話」を打ち破らないと日本の産業社会は衰退するという指摘は鋭く、著者の思いが伝わってくる。思い込みの危うさを教えてくれたことと、「神話」から解放されるには、他国と直接比較する重要性を説いた点が評価された。
■審査委員長
竹内 弘高 | 一橋大学大学院国際企業戦略研究科長 |
■審査委員
田中 昭二 | 財団法人国際超電導産業技術研究センター 顧問 |
成毛 眞 | インスパイア 取締役 ファウンダー |
西村 吉雄 | 早稲田大学大学院政治学研究科 客員教授 |
野口 照久 | テノックス研究所 所長 |
福川 伸次 | 財団法人機械産業記念事業財団 会長 |
■図書推薦委員
浅野 信久 | 大和総研 新規産業調査部 部長 |
五十嵐 太郎 | 東北大学大学院工学研究科・工学部 准教授 |
磯 達雄 | フリックスタジオ パートナー |
井上 伸雄 | 多摩大学大学院 客員教授 |
岩下 正 | ローンスター・ジャパン・アクイジションズ 会長 |
小松原 俊博 | 丸善 丸の内本店 和書グループ専門書売場 売場長 |
島本 栄光 | 日本システムアドミニストレータ連絡会 |
多喜 義彦 | システム・インテグレーション 社長 |
日比 保史 | コンサベーション・インターナショナル ジャパン 代表 |
松浦 晋也 | ノンフィクション・ライター |
三輪 晴治 | イーエイシック・ジャパン 社長 |
茂木 信太郎 | 亜細亜大学経営学部 教授 |
森山 和道 | フリーライター |
山之内 誠 | 京王書籍販売 営業推進部 部長 |
和田 ちひろ | いいなステーション 代表 |
(50音順敬称略 役職は選定時点) |
日経BP社 コーポレート管理室・広報
日経BP・BizTech図書賞に関するお問い合わせは、同賞実行委員会・岩田 電話03-6811-8650にお願いいたします。
取材のお申し込みについては、日経BP社コーポレート管理室・広報 電話03-6811-8556にお問い合わせください。