ニュースリリース

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2009年「日経BP技術賞」決定 大賞に「スクリュー式の小型蒸気発電機」

 日経BP社主催の2009年(第19回)の「日経BP技術賞」がこのほど決まりました。

 本賞は日経BP社がわが国の技術の発展に寄与する目的で創設したものです。毎年1回、電子、情報通信、機械システム、建設、医療・バイオ、エコロジーの各分野で、産業や社会に大きなインパクトをもたらす優れた技術を表彰します。

 今回は2009年に注目された技術の中から、審査委員会(委員長・大石道夫 かずさディー・エヌ・エー研究所理事長兼所長)が、以下の大賞と部門賞を選出しました。

 大賞は、松隈正樹 神戸製鋼所機械エンジニアリングカンパニー圧縮機事業部汎用圧縮機工場技術総括部長らの「スクリュー式の小型蒸気発電機」に決まりました。このほか11件の部門賞を決めました。

 また、今回は日経BP社創立40周年を記念して、過去に大賞を受賞した28件の技術の中から、最も社会と産業に貢献した、あるいは貢献すると考えられる技術や製品を、ウェブ投票で読者に選んでいただく読者大賞を創設しました。読者大賞には、2008年に大賞を受賞した京都大学 山中伸弥研究室の「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)株の樹立」が選ばれました。

 表彰式は4月6日午前11時から東京・虎ノ門のホテルオークラ東京で行います。

〈大賞〉

▲スクリュー式の小型蒸気発電機

松隈 正樹株式会社神戸製鋼所 機械エンジニアリングカンパニー 圧縮機事業部 汎用圧縮機工場 技術総括部長
松井 孝益株式会社神戸製鋼所 機械エンジニアリングカンパニー 圧縮機事業部 汎用圧縮機工場 設計室 次長
桑原 英明株式会社神戸製鋼所 技術開発本部 機械研究所 流熱技術研究室 研究員
木下 史郎神鋼造機株式会社 エネルギープロジェクト部 部長
森井 高之株式会社 テイエルブイ 設計部 プリンシパルデザインエンジニア
垣内 豊嗣神鋼商事株式会社 機械・情報本部 エネルギーシステム部 次長

 1メガパスカル未満の低圧蒸気でもスクリューが回転し、発電できる出力100kWと132kWの小型蒸気発電機を開発した。基本的にオイルフリースクリュー圧縮機の入出力を逆転させ、膨張機として応用したものだが、低圧・小蒸気量でも効率よく発電機を駆動できるという特徴を持つ。高精度の加工技術により、熱でスクリューが膨張してもすき間はマイクロメートル単位で保たれ、投入した蒸気エネルギーの最大約75%を電気に転換できる。同出力規模の既存の蒸気タービンに比べて、1.5~2倍の効率を達成した。このスクリュー式発電機を使えば、これまで未利用だった蒸気エネルギーを効率的に電気に変えることができる。またインバーターによる回転数制御で蒸気圧力一定制御(減圧弁代替)を可能とした世界初の小型蒸気発電機である。

〈部門賞〉

◇電子部門

▲デジタル機器の使い勝手を飛躍的に高める近接無線技術「TransferJet」

小高 健太郎 ソニー株式会社 コーポレートR&D TransferJet事業化推進部 統括部長
岩崎 潤ソニー株式会社 コーポレートR&D TransferJet事業化推進部 事業推進担当部長
前川 格 ソニー株式会社 コーポレートR&D TransferJet事業化推進部 2グループ 統括課長

 通信距離が最大3cmと短いながらも、最大データ転送速度で560メガビット/秒、実効スループットで375メガビット/秒を実現した直接拡散方式のUWB(Ultra Wide Band)無線技術で、2009年度の製品化を目指している。無線伝送には、遠方まで伝搬する電波ではなく、波長より短い距離にしか届かない近傍界の電界を利用する。周波数4.48ギガヘルツ(波長は約6cm)で、通信距離は波長の2分の1、約3cm以下に限られる。デジタル・カメラをテレビにかざして静止画を転送したり、携帯電話をオーディオ機器にかざして音楽や動画を転送するという使い方が可能になる。

▲大画面表示の新市場を拓く、厚さ1mmの超大型ディスプレー「Plasma Tube Array」

篠田 傳篠田プラズマ株式会社 代表取締役会長兼社長
粟本 健司篠田プラズマ株式会社 常務取締役
石本 学篠田プラズマ株式会社 取締役
平川 仁篠田プラズマ株式会社 執行役員
四戸 耕治篠田プラズマ株式会社 技術開発部
山 洋介篠田プラズマ株式会社 生産技術部

 ガラス基板をベースにして作る多くのFPD(フラット・パネル・ディスプレー)とは異なる独創的な製造方法で、厚さが1mmと薄く、曲げることができる超大画面ディスプレーを試作した。ミリメートル径のガラス・チューブ内に、放電ガスや蛍光体(RGBの3色)などを封止し、このチューブを並べて上下からフィルム状の電極で挟み込んだ構造をとる。大きさ1m×3mのパネルで、消費電力は400Wと、同サイズの他のFPDと比較して非常に低い。並べるチューブの本数を増やすだけで容易に大画面化でき、並べ方次第でディスプレーの形状を自由に変えられる。

◇情報通信部門

▲人体表面通信技術「レッドタクトン」の研究開発と実用化

門 勇一日本電信電話株式会社 マイクロシステムインテグレーション研究所 スマートデバイス研究部 部長
品川 満日本電信電話株式会社 マイクロシステムインテグレーション研究所 スマートデバイス研究部 主幹研究員
松本 亮一NTTエレクトロニクス株式会社 BBシステム・デバイス事業本部 セイフティ・ネットワーク事業部 通信装置開発部 部長
矢野 隆夫NTTエレクトロニクス株式会社 BBシステム・デバイス事業本部 エレクトロニクス事業部 第二商品開発部 主事

 人体表面に誘起される電界を使って信号を伝える技術で、230キロビット/秒の単一方向通信を実用化した。ガラスや木材、ゴムやプラスチックなど、誘電体の性質を持つ一般的な材質を通して通信できるという特徴がある。送信機(ICカードなど)を身に付けた人が受信機を取り付けたドア・ノブに手を触れだけで認証するような入退室管理システムを実現できる。

▲拡張現実を実現するアプリケーション開発のためのC言語ライブラリ「ARToolKit」

加藤 博一奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科情報処理学専攻 インタラクティブメディア設計学講座 教授

 実社会の映像にデジタル情報を重ね合わせるユーザー・インタフェース技術「拡張現実」(AR)を実現するアプリケーション開発向けのオープンソースC言語ライブラリを開発した。すでに、ニコニコ動画やユーチューブ(YouTube)に投稿されている動画のARアプリケーションの多くに、「ARToolKit」が使われている。C言語の基礎知識があるプログラマーなら、簡単に利用できるようにした貢献度は大きい。

◇機械システム部門

▲希土類磁石を使わずに効率を大幅に高めたモーター技術

榎本 裕治株式会社日立製作所 日立研究所情報制御研究センタ モータイノベーションセンタ 主任研究員
井出 一正株式会社日立製作所 日立研究所情報制御研究センタ モータイノベーションセンタ 部長
正木 良三株式会社日立産機システム 研究開発センタ 主任技師
森永 茂樹株式会社日立産機システム 研究開発センタ センタ長
谷川 茂穂日立金属株式会社 先端エレクトロニクス研究所 主管研究員
天野 寿人日立金属株式会社 磁性材料研究所 マグネット設計室 研究員
  

 希土類磁石を使わず、鉄心にアモルファス金属(鉄系)を適用し、そしてローターとステーターのエアギャップをモーターの軸方向に設ける独自の構造を採り入れ、さらに鉄心を筒状に巻いたアモルファス金属(鉄系)を適用することで効率を大幅に(約5%)向上した。径方向にエアギャップを設ける従来型のモーターでは、プレス加工した板を積層して鉄心として使うため、アモルファス金属を適用しにくかった。現在、ハイブリッド車や電気自動車の走行モーター、省エネルギー型の家電や産業機器向けのモーターなどに利用されている希土類磁石を代替できる可能性が高い。安定確保に不安がある希土類元素の需給バランスを改善できる。

▲鋳造できる金型材

渡辺 利隆有限会社渡辺鋳造所 代表取締役
石井 和夫有限会社渡辺鋳造所 製造部 スタッフ
山田 享山形県工業技術センター 置賜試験場 場長
中野 哲山形県工業技術センター 素材技術部 開発研究専門員

 鋼にニッケルとマンガン、シリコンを添加し、深冷(セ氏0度以下)処理を施すことで、優れた成形性など鋳鋼の特徴を持つ金型材を開発した。型の硬さ低下の原因となる「残留オーステナイト組織」を除去でき、焼入れによる硬化をより高めることが可能となる。引っ張り強さは、1000メガパスカル以上で、プラスチックの射出成形などに用いる金型材と同等レベルの機械的性質を実現した。日本のものづくりの根幹を成す基盤技術である金型技術で、非常に複雑な形状の金型を容易に造れるようになる。

◇建設部門

▲TBM(トンネル・ボーリング・マシン)とNATM法を組み合わせて不良地山を掘り抜いた「飛騨トンネル」の掘削技術

川北 眞嗣中日本高速道路株式会社 名古屋支社 建設事業部 企画統括チーム チームリーダー
森山 守中日本高速道路株式会社 金沢支社 金沢保全サービスセンター 工務担当課長
山田 隆昭株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング 常務取締役
寺田 光太郎中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 羽島道路事務所 所長
松原 利之飛島建設株式会社 土木事業本部 土木技術部 トンネル技術グループ 部長
小林 伸次大成建設株式会社 本社土木本部 土木技術部 トンネル技術室 次長

 地質状況に応じてTBM(トンネル・ボーリング・マシン)と、吹き付けコンクリートやロックボルトで地山を固めながら掘り進む「NATM工法」を組み合わせて、近年まれに見る難条件下で東海北陸自動車道の「飛騨トンネル」(2008年7月開通、長さ10.7km)を掘り抜いた。本坑と、先進導坑の役割も果たす避難坑に分かれ、当初は両坑ともほぼ全線をTBMで掘削する予定だったが、掘削開始直後から大湧水に悩まされ、掘削と停止を繰り返した。本坑、避難坑ともTBMが途中で動かなくなり、最終的にNATM工法による「迎え掘り」で貫通した。さらに高速道路の本線トンネルの最終覆工として初めて、吹き付けコンクリート(HPFRCC=複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料)も採用している。

▲「ダルマ落とし」のように超高層建築を足元から解体して周辺への影響を軽減した「鹿島カットアンドダウン工法」                 

伊藤 仁鹿島建設株式会社 東京建築支店 第四事業部 事業部長
川上 敏男鹿島建設株式会社 東京建築支店 第四事業部(仮称)元赤坂Kプロジェクト工事事務所 所長
吉川 泰一朗鹿島建設株式会社 東京建築支店 建築部機材部管理グループ グループ長
水谷 亮鹿島建設株式会社 機械部 技術4グループ 次長
森島 洋一鹿島建設株式会社 建築設計本部 構造設計統括 業務・宿泊統括 グループリーダー
小林 実鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築技術部 技術コンサルグループ グループ長
   

 「ダルマ落とし」のように地上階付近から順に建物を解体する新工法で、従来工法に比べて上層階での作業を大幅に減らせる。鹿島建設は自ら開発したこの工法で、東京都港区にある旧本社ビル2棟を解体した。柱を切断してジャッキで支え、解体しながらジャッキダウンする。柱を切断した状態での地震も想定し、建物中央部に鉄筋コンクリート造の「コアウォール」を地下1階から地上3階まで設け、この周囲に鉄骨製の荷重伝達フレームを設置した。建物を足元から解体するメリットは、1.騒音や粉じんの飛散の抑制により周囲地域への影響を軽減、2.資源の分別やリサイクル作業の効率アップ、3.高所作業削減による安全性の向上など。特に、1の周囲地域への影響の軽減は、発注者や施工者だけでなく、一般社会にもメリットのある技術として、注目に値する。今後、増加するであろう超高層建築物の解体のために開発された将来性のある工法である。

◇医療・バイオ部門

▲小腸疾患を診断・治療できるダブルバルーン内視鏡

山本 博徳自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 教授
山高 修一富士フイルム株式会社 メディカルシステム事業部 内視鏡システム部 次長
菊池 克也富士フイルム株式会社 メディカルシステム事業部 内視鏡システム部 開発グループ 部長
西口 恒雄ニスコ株式会社 代表取締役社長

 内視鏡の先端部に自在に膨らますことのできるバルーンを二つ付け、それを足場に腸管を手繰り寄せながら尺取り虫のようにスコープを進めていく仕組みによって、これまで不可能だった小腸の内視鏡による治療を可能にした。この内視鏡の開発によって、小腸全体の内視鏡治療が初めて可能になった。これまで開腹による手術が必要だった小腸ポリープや、原因不明の出血とされ、治療できなかった小腸からの出血なども、患者の負担を少なくして治療できる。「未知なる大陸」と呼ばれていた小腸の研究が進み始めており、実際の臨床現場への影響も大きい。

▲巨大ゲノム再構築技術

板谷光泰慶応義塾大学 環境情報学部/先端生命科学研究所 教授
柘植謙爾慶応義塾大学 大学院政策・メディア研究科/先端生命科学研究所 特別研究講師
黒木あづさ東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 産学連携研究員
藤田京子株式会社三菱化学科学技術研究センター バイオ技術研究所 研究技術職

 PCR(Polymerase chain reaction=DNAの増幅法)産物などの短いDNAを順につなぎ合わせてゲノムを構築する手法「ドミノ法(Domino method)」を開発し、イネ葉緑体(13万4500塩基対)と、マウスのミトコンドリアのゲノム(1万6300塩基対)を丸ごとクローン化することに成功した。ドミノ法では、枯草菌のゲノムベクター(BGMベクター)の特定の配列の間で、相同組み換えにより、ドミノクローンと呼ばれるDNA断片を接続する。ドミノクローンが希望通りの順番で連結できれば、BGMベクターの中の元の配列は引き伸ばされる。再構築された巨大なDNA配列は環状プラスミドとして回収する。生物のゲノムを大きさによらず自由に設計できる、構成生物学の新しい手法といえる。

◇エコロジー部門

▲新型高機能ゼオライト「AQSOA」を応用し、60℃の低温排熱で駆動する吸着式冷凍機

高橋 浄三菱樹脂株式会社 産業資材事業本部事業開発部 執行役員 部長
吉江 建一三菱樹脂株式会社 産業資材事業本部事業開発部 担当部長
垣内 博行株式会社三菱化学科学技術研究センター 機能商品研究所 主任研究員
武脇 隆彦株式会社三菱化学科学技術研究センター 機能商品研究所 主任研究員
賀集 豊株式会社前川製作所 専務取締役
島 明株式会社前川製作所 営業本部 環境エネルギーグループ 次長
小松 富士夫株式会社前川製作所 エンジニアリング本部 プラント技術センター 課長
   

 固体の吸着剤を使った冷凍サイクルで冷水をつくる「吸着式冷凍機」に、新型高機能ゼオライト「AQSOA」製の吸着剤を使い、60~85℃の低温でも吸着剤の再生(冷媒である水蒸気の発散)を可能にした。太陽熱や工場排熱を使って、冷凍サイクルを回すことができ、従来は難しかった80℃以下の低温排熱を使った冷房が可能となった。これまで吸着式冷凍機には「シリカゲル」が用いられていたが、三菱樹脂は多孔質の天然鉱物であるゼオライトの表面にケイ素や鉄を付けるなどして、60~85℃でも乾燥するように改良した。実証機では太陽熱で安定的に稼働した。2009年度には商用機がリリースされる予定。

〈読者大賞〉

2008年 日経BP技術賞 大賞

▲ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)株の樹立

京都大学 山中伸弥研究室
(代表)
山中 伸弥
京都大学 物質‐細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センター センター長
京都大学 再生医科学研究所 再生統御学研究部門 再生誘導研究分野 教授

 2006年にマウス線維芽細胞で成功していた人工多能性幹細胞(iPS細胞)株の樹立に、ヒト線維芽細胞でも成功した。iPS細胞は、無限に増殖でき、しかもあらゆる臓器や組織になる可能性を秘めている。山中教授のグループは、マウス体細胞をiPS細胞に戻した四つの因子、「OcT3/4」、「Sox2」、「c‐Myc」、「Klf4」をヒト由来の線維芽細胞株「HDF‐S1c7a1」に導入して培養し、5万個の線維芽細胞から、25日ほどで10のヒトiPS細胞の塊(コロニー)を得た。また、がん遺伝子である「c‐Myc」を使わずにiPS細胞を作製することにも成功した(移植臓器・組織ががん化する危険を避けることができる)。2006年のマウス線維芽細胞からのiPS細胞株樹立で、日経BP技術賞の部門賞を獲得していたが、2007年にヒト細胞で成功したことで、発生生物学の基礎研究から再生医療などの応用まで、一気に展望が開けた。

■審査委員(敬称略)

審査委員長
大石 道夫かずさディー・エヌ・エー研究所理事長兼所長
   
審査委員(五十音順)
板生 清東京理科大学総合科学技術経営研究科教授
岡田 恒男日本建築防災協会理事長/東京大学名誉教授
川島 一彦東京工業大学大学院理工学研究科教授
木村 文彦東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻教授
後藤 滋樹早稲田大学理工学部情報学科教授
鈴木 基之放送大学教授
中野 栄二千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科教授
永井 良三東京大学大学院医学系研究科教授
永田 勝也早稲田大学理工学部機械工学科教授
西村 吉雄早稲田大学客員教授
橋本 大定埼玉医科大学総合医療センター外科教授
福手 勤東洋大学工学部環境建設学科教授
安田 浩東京電機大学未来科学部教授
山本 良一東京大学生産技術研究所教授

(受賞者および審査委員の所属・肩書きは選考時点のものです)

日経BP社コーポレート管理室・広報

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