日経BP環境経営フォーラムが一般の消費者に対して、今年3月24日から4月30日にかけて実施した「第9回 環境ブランド調査」の結果がまとまった。
アンケートは、主要企業560社を対象に、各企業の環境に関する活動が一般の消費者にどう伝わっているかを、インターネットを利用して調査したもので、2万233人から有効回答を得た。企業の環境に関する「評価」「イメージ」「情報への接触度合い」などを尋ねた結果を総合し、環境ブランド力に相当する本調査独自の指標「環境ブランド指数」で順位付けした。
環境ブランド指数が最も高かったのはトヨタ自動車だった。トヨタのトップは調査を始めた2000年以来、9年連続になる。環境ブランド指数(偏差値)は前年の99.9から105.2に上昇。調査対象企業のなかで唯一100を超え、2位以下を15ポイント以上引き離すなど突出した高評価だった。
同社は燃費性能に優れるハイブリッドカーの低コスト化を着実に進め、米国、中国での生産開始に続き、オーストラリアやタイでも生産計画を打ち出すなど量産体制の拡充を加速させている。地球温暖化への対応が緊急の課題となるなか、ハイブリッドカーの本格普及などを通して自動車の低炭素化をリードする同社の姿勢が消費者に伝わり、引き続き高い評価を獲得した。
続いて、2位にはサントリー(前年8位)、3位にはキリンビール(同6位)とビール2社が前年より順位を上げる形でトップスリーに入った。
サントリーは「水と生きる」をテーマとした企業ブランドの形成に力を入れている。宣伝や広告のほか実活動でも、ビールや清涼飲料の原料となる地下水の養成を目的とした森林保護などを全国で展開。社会貢献活動の一環として、小中学生や消費者を対象に森林体験を通した環境教育をプログラム化するなど、自社の取り組みを分かりやすく伝え、支持を広げた。
そのほか、ビール大手ではサッポロビールが9位(前年11位)、アサヒビールが10位(同5位)となり、いずれも上位に顔をそろえた。
4位は日産自動車(前年7位)、5位にはホンダ(前年2位)が続いた。日産は二酸化炭素の排出を削減でき、国内の厳しい排ガス規制もクリアするクリーンディーゼルを他社に先駆けて今年後半にも投入するほか、大容量リチウムイオン電池を搭載した次世代電気自動車の量産計画を明らかにするなど、最近は独自の環境戦略が目立つ。ハイブリッド技術などの環境技術で後れを取っていた同社だが、ここにきて期待感が高まり、今回はわずかだがホンダの評価を上回った。
電機では、松下電器産業が6位だった(前年9位)。同社は世界の製造拠点全体から排出される二酸化炭素の総量を2010年に2000年水準にまで削減する目標を掲げるなど、グループを挙げての温暖化対策の加速を表明。消費者には独自のヒートポンプ技術を組み込んだ洗濯乾燥機や電球型蛍光灯など家電製品全般で省エネ性能の一層の向上をアピールし、評価を上げた。
調査では各企業に当てはまる具体的なイメージについても尋ねている。
「省エネや地球温暖化防止に努めている」と「有害物質の削減や排出抑制に努めている」の2項目は両方でトヨタ自動車が1位、日産自動車が2位になるなど自動車が高い評価を得た。「省資源やリサイクル、廃棄物削減に努めている」ではキリンビールが1位、イオンが2位と、容器のリサイクルやレジ袋の削減などで評価された企業が上位になった。「生物多様性の保全や自然保護に努めている」はサントリーが1位、日本たばこ産業が2位になった。
一方、マイナスイメージでは「エネルギーを無駄遣いしたり、地球温暖化を進めたりしている」でヤマト運輸が1位、続く2位がトヨタ自動車など運輸、自動車、石油が上位に並んだ。また、「効率的な資源利用や廃棄物の量に課題がある」は日本マクドナルド、すかいらーくといった外食産業、セブン-イレブン・ジャパンやローソンといったコンビニエンスストアが上位に挙がった。売れ残った食品や弁当などを廃棄するイメージの反映がうかがえる。
マイナスイメージは業種や業態に対するイメージが特に業界の大手に反映される傾向がある。マイナス面を改善する努力が伝わると、対照となるプラスイメージの評価が高まり、高い総合評価を獲得する企業も多い。
【ご参考】
日経BP環境経営フォーラム
日経BP社が、地球環境の保全と企業経営の持続的発展を支援する目的で、2000年に設立した。現在、178社(5月末時点)の協賛企業と共同で、環境経営に関する研究会活動や調査などに取り組んでいる。
【参考資料】
■環境ブランド指数ランキング上位30社
順位 | 前年 | 企業名 | スコア(偏差値) |
1 | (1) | トヨタ自動車 | 105.2 |
2 | (8) | サントリー | 89.6 |
3 | (6) | キリンビール | 87.0 |
4 | (7) | 日産自動車 | 85.9 |
5 | (2) | ホンダ | 84.3 |
6 | (9) | 松下電器 | 83.6 |
7 | (3) | イオン | 83.3 |
8 | (4) | シャープ | 81.1 |
9 | (11) | サッポロビール | 80.5 |
10 | (5) | アサヒビール | 78.1 |
11 | (10) | 松下電工 | 76.5 |
12 | (35) | 東京電力 | 76.2 |
13 | (25) | キリンビバレッジ | 73.7 |
14 | (40) | 日本たばこ産業(JT) | 73.2 |
15 | (49) | 日本マクドナルド | 73.1 |
16 | (19) | ソニー | 72.1 |
17 | (20) | コスモ石油 | 71.9 |
18 | (13) | 新日本石油(ENEOS) | 71.7 |
19 | (26) | 三菱電機 | 71.6 |
20 | (17) | 花王 | 71.2 |
21 | (15) | 東芝 | 70.9 |
22 | (23) | アサヒ飲料 | 70.0 |
23 | (46) | 味の素 | 69.6 |
24 | (37) | キヤノン | 68.8 |
(14) | セブン-イレブン・ジャパン | 68.8 | |
26 | (24) | 日清食品 | 68.7 |
27 | (20) | 日立製作所 | 68.6 |
(32) | ヤマト運輸 | 68.6 | |
29 | (62) | 三洋電機 | 68.5 |
30 | (84) | コクヨ | 68.2 |
(37) | ファミリーマート | 68.2 |
[集計方法] 企業ブランドの形成に強く影響する4つの指標を総合した「環境ブランド指数」を主要指標とする。ベースになる4つの指標とは、回答者が当該企業の環境情報に触れた度合いである「環境情報接触度」、環境報告書や各種メディアなど環境情報の入手先を集計した「環境コミュニケーション指標」、環境面で当てはまると思われるイメージ(15項目)について集計した「環境イメージ指標」、環境活動への評価度合いを集計した「環境評価指標」。スコアは偏差値(平均50)で表記し、全体のなかでの位置が分かるようにした
●プラスイメージ上位10社 | ●プラスイメージ下位10社 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■地球温暖化防止や省エネに努めている
| ■地球温暖化を進めたり、エネルギーを無駄遣いしたりしている
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■省資源やリサイクル、廃棄物削減に努めている
| ■効率的な資源利用や廃棄物の量・処理法などに課題がある
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■有害物質の使用削減や排出抑制に努めている
| ■有害物質を使用したり、大気・水・土壌などを汚染している
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■生物多様性や動植物資源の保全、自然保護に努めている
| ■生物多様性や動植物資源の減少、自然破壊を進めている
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[集計方法] 「この企業の環境活動についてどう思うか」と尋ね、以上のイメージから当てはまると思うものを複数回答可能の条件で選んでもらった。スコアは回答者が各イメージを選んだ比率(%)