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プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授 後藤純一 氏
慶應義塾大学総合政策学部教授
後藤 純一 氏
1951年生まれ。
1975年労働省入省。
労働経済専門官、世界銀行国際経済局エコノミスト等を経て1991年退官。
その後、神戸大学経済経営研究所助教授、教授、研究所長を経て、
2009年より現職。専門は国際経済学・労働経済学。経済学博士(イェール大学)
●著書/『国際労働経済学―貿易問題への新しい視点』(第31回日経経済図書文化賞 東洋経 済新報社/1988年)、『外国人労働者と日本経済』(有斐閣/1993年)ほか
Good Doctor NET メンタルヘルスとリワーク

新たな国家像に向かって2030年の超高齢社会を設計し創造する

「ASIAN AGING SUMMIT 2013」開催報告 第37回

取材:AGING SUMMIT 取材班 酒井弘樹
文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局 阪田英也
2014/09/04

国家100年の計で労働政策を

安易な移民政策に頼ることなかれ

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことを受けて、インフラ整備を中心とする労働力不足に対応するため、早くも「外国人労働者を雇用すべし、そのための規制改革を推進すべき」との声が上がっている。

これまでも外国人労働者の受け入れは、少子高齢化に伴う中長期的な人手不足への対応策として議論されてきた。しかし、中途半端な数の外国人労働者受け入れは、ベネフィットよりもコストのほうが大きい。具体的には、少なくとも生産年齢人口の1割、すなわち650万人以上の受け入れでなければ、社会にとってはマイナスの影響のほうが大きい。

果たして日本にそのような覚悟があるだろうか。ましてや日本人がやりたがらない「3K」職場を外国人に肩代わりさせるという発想では、3Kという労働環境そのものが社会に温存されてしまう。オリンピック熱に水を差すつもりはないが、冷静な議論を望みたい。

問われているのは、国家としての器

わが国の生産年齢人口は、今後25年間で1700万人(約20%)減少すると予想されており、長期的には出生率を上昇させる人口政策が重要なのは論を待たない。しかし、労働政策的対応によっても、労働力不足に対応することは可能である。それは、①労働生産性の向上、②ヒトではなく、モノ・カネの国際移動の推進による、間接的な外国人労働力の活用、③女性、高齢者、若年者等の潜在労働力の活用の3つに分けることができる。

労働生産性の向上は、創意工夫などによる企業レベルの単位生産性の向上ではなく、生産資源を低生産性部門から高生産性部門にシフトさせることにより実現する配分生産性の向上がポイントである。前述した②におけるカネの移動は海外直接投資を指し、労働集約的な低生産性部門を海外へシフトし、国内を高生産性部門化することと連動する。

モノの移動は貿易自由化であり、筆者の推計によれば、貿易制限率(関税率プラス非関税障壁の関税相当分)のわずか2%の引き下げによるモノの移動促進の経済的効果は、800万人の外国人労働者受け入れの経済効果に匹敵する。

潜在労働力である女性や高齢者、若年者のうち、とりわけ女性の就業率の向上は重要である。潜在的な伸びしろが大きいだけでなく、これが実現できるということは、日本社会が根本から変わることだからである。

すなわち、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきか」という問い(内閣府調査/ 2012 年)で、いまだ賛成が過半数を超える社会から、男女にかかわらず、働きたい人は働ける社会へ。女性が賃金や昇進で差別される社会から、仕事の成果が平等に評価される社会へ。一度職場から離れたら復帰や再就職が難しい社会から、再チャレンジが容易な社会へ。

問われているのは、単なる数合わせではなく、わが国が国家100年の計に則り、どのような社会を目指すのかに他ならない。

(取材:AGING SUMMIT 取材班 酒井弘樹 
文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局 阪田英也)

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