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プロフィール

三菱総合研究所理事長 小宮山 宏 氏
三菱総合研究所理事長 小宮山 宏 氏
1944年生まれ。
1967年東京大学工学部卒業。
1971年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
2000年に東京大学大学院工学系研究科長、工学部長に就任。
2005年東京大学総長に就任し、2009年4月より現職
著書:1999年「地球持続の技術」(岩波新書)。2011年「日本「再創造」― 「プラチナ社会」実現に向けて」(東洋経済新報社)。2007年「「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ」(中央公論新社)。「サステイナビリティ学への挑戦(岩波科学ライブラリー)」(岩波書店)ほか
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シンポジウムIII
2030年へのロードマップ この国を“創る”

構成:AGING SUMMIT 取材班 但本結子
文責:日経BP社日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也
2012/04/02

基調講演
2030年へのロードマップ この国を“創る”

「坂の上の雲」の先へ進むために

「幸せな加齢の5条件」とは

我々は雲の中にいる。「坂の上」にある「雲」の中だ。「坂の上の雲」を目指していればいい時代は終わった。雲の中から、次に進むべき道を自ら選び取るのが先進国のなすべきことだ。

2030年に向けた最悪のシナリオは、独居老人の増加だ。老人が独り認知症になり、独り最期を迎える社会はあまりにも惨めで虚しい。それを防ぎ、超高齢社会を豊かで活力ある社会にするための手立てが必要だ。

高齢者が豊かに年を重ねる条件を、私は「幸せな加齢の5条件」と呼んでいる。「栄養」「運動」「社会との交流」「柔軟な心」「前向きな思考」の5つだ。これを満たすと、観念論ではなく物質的な意味で健康を保てることがわかってきている。「社会との交流」を欠く独居老人の暮らしからは、他の要素も失われていく。高齢者の社会との接点を確保することがまずもって重要だ。

高齢者の能力についても多くのことが分かってきた。肉体的な能力は20歳頃、記憶力については40歳頃にピークを迎えるが、語彙や日常的な問題解決能力は75歳までは増え続ける。「5条件」を満たす人ほど能力を長く維持する。

認知能力の年齢による変化
認知能力の年齢による変化(クリックすると拡大します)

実行に移す気概を持て

高齢者の知恵と経験を社会が活かすことは、高齢者が健康と能力を保つのみならず、社会にとっても有益だ。例えば、教育現場での高齢者の活用。教育の本質は社会の実像を学ぶことにあり、人員構成を社会と同じくすることは子どもにもプラスに働く。だが、今の日本で新しいことを始めようとすると、「前例がない」「規制がある」と、できない理由が立ちはだかる。

「YouTube」や Googleの「StreetView」は、わずか数年で世界中で利用されるツールになった。いずれも、まともに認可を取ろうとしたら実現できなかった。多くの人に役立つ面白いものを作ってしまえば、社会は認めざるを得ない。

ここから「“Don,t Ask” Policy」を学び取り、いいと思ったことは覚悟をもって実行に移す気概が、特に組織のトップに求められる。

日本は「坂の上の雲」を目指して素晴らしい国を実に精緻に作り上げた。だが今は、自ら作り上げた精巧なシステムに搦め捕られて、身動きが取れなくなっている。そこから抜け出し、「雲」の先に進むために必要なのは、覚悟をもって実行することだ。

Vision without action is a daydream.Action without vision is a nightmare.

Visionすら語れない現状は問題だが、Visionを描いたら何が何でもActionに結び付ける気概と行動力を、「坂の上の雲」を目指して邁進した先人たちのように、我々は取り戻さなければならない。

(取材:日経BP社日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也 
構成:AGING SUMMIT 取材班 萱原正嗣)

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