AGING Web

トップページ > AGING FORUM 2011開催報告 > シンポジウムI 超高齢社会 アカデミアからの予測と課題

プロフィール

東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫 氏
東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫 氏
1947年生まれ。
1971年東京大学法学部卒業後、厚生省(当時)に入省。
1988年老人福祉課長。
1996年大臣官房政策課長。
1998年大臣官房審議官(医療保険、健康政策担当)。
2001年年金局長。
2002年大臣官房長。
2003年保険局長。
2006年厚生労働事務次官等を経て現職。
厚生労働省在任中に医療制度改革などに携わった
著書:「日本の医療制度改革がめざすもの」(時事通信社)など
Good Doctor NET メンタルヘルスとリワーク

シンポジウムI 超高齢社会 アカデミアからの予測と課題

構成:AGING SUMMIT 取材班 但本結子
文責:日経BP社日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也
2012/04/02

基調講演
2030 年ビジョン I 超高齢社会 日本の現実

高齢化をポジティブに受け止める

「高齢者」の現実の姿とは

高齢化が急速に進む日本の現実を、どうポジティブに受け止めるかが問われている。

東京大学の秋山弘子教授の研究によれば、日本の高齢者の多くは75 歳くらいまでは元気で自立していることが分かる。65 歳で引退させられるのはこれまでの話で、もう10 年は長く働けるのが現代の「高齢者」の実像だ。それを可能にする就労環境を作ることが基本的に必要だ。併せて、日本の高齢者の虚弱化をいかにして遅らせるかが大きな課題となるが、外に出て社会生活を続ければ、年を重ねても元気でいられることが明らかになっている。このような観点からも、できる限り長く働き続けられる地域・コミュニティを作ることが日本の超高齢化へ重要な対応策だと考える。

一方、集団としては75 歳を過ぎると弱り始める人が次第に増えることも現実だ。ピンピンコロリは理想だが、大部分の人は大なり小なり虚弱な期間を経て死に向かう。それを“つらい状態”とするのではなく、皆が心の通じ合う“ぬくもりのある形”で老いることのできる社会システムで迎えることが求められている。虚弱期でも心豊かに生きられる社会を作ることが、経済発展を遂げた国の大切な仕事だ。超高齢社会は経済発展の成果であり、その行く末が歳をとって惨めになる社会であってはならない。

人口ピラミッドの変化(2005,2030,2055)-平成18年中位推計-
人口ピラミッドの変化(2005,2030,2055)-平成18年中位推計- (クリックすると拡大します)

超高齢社会を
豊かな社会にするために

虚弱期を心豊かに生きられる社会とは、虚弱になっても社会性が失われないで「共に生きる社会」だといえる。そのために、良質な医療・介護ケアを生活の場としての住まい(在宅)に浸透させ、在宅で、できる限り自分らしい生活を続けられるように社会システムを転換する必要がある。

在宅での医療・介護ケアが当たり前になれば、弱りながらも自分らしさを保てる人が増え、そこから様々な願望も生まれてくるはずだ。例えば、噛む力が衰えても親しい人と共に会食して、最期まで美味しいものを味わいたいという人はいるだろうし、家を“終の住処”にするために自宅をしっかりリフォームしたり、最期まで安心して住めるマンションを求める人もいるだろう。在宅医療・介護システムが地域開発の一環として位置付けられれば、地域全体で新しい需要が生まれてくる。そうすれば、生活の場へ投資が向かう。

その恩恵を多くの人が受けられるように、社会保障の充実も併せて行わなければならない。そのための負担増は不可欠だが、中間所得階層にお金が回るシステムがあればこそ、経済が循環し地域が安定する。高齢社会への対応を内需や雇用に転換するための仕掛けとしても社会保障は大切だ。

一方、医療・介護サービスだけで日本経済を牽引するのは難しい。これまで述べたような高齢化への対応を行いつつ、国際競争力のある産業を育て、全体として持続的に経済を発展させ、アジアのモデルとなることが、21 世紀の前期・中期の日本のあるべき姿だと考える。

(取材:AGING SUMMIT 取材班 萱原正嗣 
文責:日経BP社日経BPnet編集プロデューサー 阪田英也)

Copyright(c) Nikkei Business Publications,inc. All Rights Reserved.