
![]() 奇想天外なスペクタクルで燃える
忍者小説は山田風太郎の独壇場。『山田風太郎忍法帖短編全集 全12巻』(筑摩書房)で風太郎忍法に浸れば,身も心も軽くなる。 風太郎に次ぐ伝奇小説の担い手は荒山徹だ。『魔風海峡 上・下』(祥伝社文庫)は秀吉の朝鮮侵略が背景。欽明帝が遺した黄金奪取のため,真田幸村率いる真田忍者が朝鮮に渡る。迎え撃つのは朝鮮国の第一王子・臨海君(イムヘグン)に仕える高麗七人衆。想像を絶する妖術が炸裂する忍法合戦は痛快。骨太な歴史小説でありながら,伝奇ロマンの楽しさを併せ持つ快作を堪能しよう。 風太郎は『柳生十兵衛死す』(小学館文庫)で十兵衛を二度殺したが,荒山徹『十兵衛両断』(新潮社)では,三たび死ぬ。妖術ノッカラノウムによって,韓人柳三厳と十兵衛の魂が入れ替わり,韓人の魂を宿した十兵衛の肉体は朝鮮に渡る。かたや十兵衛の魂に残されたのは貧弱な妖術師の肉体。十兵衛は長い克己修行の果て,剣豪の肉体と技量を取り戻す。遂に韓人十兵衛と再生十兵衛のアイデンティティをかけた死闘が繰り広げられる。韓国に留学,朝鮮半島の歴史を学んだ著者が,虚と実を織り上げた希代のエンタテインメントだ。 (青木逸美)
![]() プロフィール
青木逸美(あおき・いづみ) パソコン,映画,小説までなんでもこなす,編集&ライター。幼少時から時代劇を深く愛する。年間150冊程,時代小説を読む。次に生まれ変わるなら江戸時代と決めている。理想の男性は池波正太郎の描くすべての男。
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