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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第16回 甲府い
2007/10/12

演題は「一言でその噺とわかるもの」になっている
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 秋、まっただ中というところでしょうか。この原稿の更新日は10月12日。完璧です。今日しかありません。前から取り上げようと思っていた噺ではありましたが、偶然といえば偶然。今日はとくとお楽しみください。

 10月12日は日蓮宗の行事であるお会式。ちょうどこの日の出来事が題材となっている噺があるのです。その名も「甲府い」という噺です。

 「こうふい」と読みます。へんてこりんな名前ですね。作者不詳の古典落語の演題というのは音楽や小説と違ってタイトル先行ということはありません。元は名前もなかったものが、楽屋のネタ帳に記録をするようになって、噺家同士で「あの噺は、この噺は」とやっているうちに符丁として呼ばれるようになったものと推測されます。

 ですからこれらの演題はその噺のテーマや重要事項を盛り込んだものではなく「一言でその噺とわかるもの」になっているんですね。このネーミングのセンスが、そのまんま噺家の培ってきたセンスなのではないでしょうかね。必要不可欠ですからね、扇子は・・・。

 別名として「法華豆腐」「出世豆腐」などと呼ばれていますが、断然「甲府い」ですな。

 豆腐屋の店先できらず桶をあさっているものがいる。これがこの噺の主人公、善吉です。目撃した店の若い者に打擲されているところを主が止めに入ります。いろいろと話を聞いてみるとこの善吉、甲府から出てきて江戸で一旗上げようと途中身延山に願がけに寄り、やっと着いた江戸浅草で巾着切りに遭い、無一文のひもじさで悪いとは知りながら雪花菜(おから)を頬張っていたのでした。

 幸いなことに豆腐屋の主も宗旨は法華、これがご縁で善吉が豆腐屋で働くことになりました。ここからは、お定まりの出世物語。善吉が一生懸命働くから、豆腐屋も繁盛、一人娘のお花と所帯を持つことになり、以前願がけをした身延へお礼参りの旅にでることになります。

 サゲはね、ぜひ実際に聴いてください。心からお願いいたします。実際にですよ。調べたりしちゃダメ。

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