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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第15回 野ざらし
2007/09/28

 みなさま、いかがお過ごしですか。秋の夜長、寄席にお出かけになって一杯引っかけて、うちに帰ってまた噺のCDでも聞きながらとろとろするんだか、夜更かしするんだかなんというのも乙なもんです。

 「野ざらし」という噺をご存じでしょうか。

 お古い方なら先代の春風亭柳好(りゅうこう)師匠が有名。「野ざらしの柳好」という二つ名を持つぐらいですから、一度録音などでお聴きになってみるといいかもしれません。亡くなった古今亭志ん朝師匠のもとても華やかで素敵でしたし、手前の師匠柳家小三治もしばしば高座にかけます。

早合点の積み重なった先に展開する馬鹿馬鹿しさ
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 この噺は「道楽」という話題をマクラにいたします。釣りの場面が出てくる噺なので「釣り道楽」にまつわる小噺などをふりながら、お客さまの反応をみたりする。

 道楽というものは「夢中」になってしまうからこそ道楽となり得るわけです。人に話をして感心されたりするような生やさしいものは道楽とは呼びません。せいぜい「趣味」とでもいいましょうか。興味のない人には全く理解されないけれど、ひとたび同好の士と出会った日には時間も財布の中身も忘れて興じてしまうもんですな。

 まあ趣味ぐらいでやめておくのがいいのかもしれませんけど、一つぐらい道楽を持っているのもいいものです。噺の稽古もしないで、みなさんに落語の世界への招待状をこうやってコツコツ書き続ける。時間も忘れて、他の噺家があきれるのも知らないで。 この「落語の世界へようこそ」はわたくしの道楽の一つ、でもございます。

 さて、この噺の主な登場人物は八五郎と尾形清十郎という元侍の釣り好き。その他大勢に、最後に幇間(編集部注:ほうかんまたはたいこ、太鼓持ち)。噺の筋は簡単で、隣に住んでいる尾形清十郎が女の幽霊とよろしく一夜を過ごしたのをうらやんだ八五郎が、その真似をして失敗するというお話。思いこみ、早合点の積み重なった先に展開する卓越した馬鹿馬鹿しさがこの噺のキモです。

 この噺、こぶ平だった9代目林家正蔵からさかのぼること150年以上前、二代目の林屋(このころはこの字をつかっておりました)正蔵作と言われております。また原典もありまして、いろいろな噺の元になっている中国の有名な小話集「笑府」の中の「学様」、ここに設定がそのまま残っています。

 ちょっとアカデミックかしら。ま、いいか。こういう成り立ちがあって、その後の噺家がいろいろと工夫して、このくだらない噺をくだらなくなくお聞かせいたします。いや・・・あくまでくだらなく、くだらなく・・・。

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