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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第14回 残暑は手ぬぐいで乗り切ろう
2007/09/14

小道具として必携の手ぬぐい、忘れた時は・・・
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 さて、夏の噺を3つと、秋の噺を1つご紹介してきました。季節ごとにこのくらいの数の噺をご紹介できたらいいなあと考えています。10年の連載で120ほどの噺が登場する計算になります。10年続けば、という話ですが・・・。せっかくだから、永〜くおつきあいしたいものですね。

 今回は「手ぬぐい」のお話をいたします。実は、夏に入る前にみなさんに「手ぬぐいのススメ」を書こうと思い立ったのですが、はたと思いとどまりました。真夏の汗とりは手ぬぐいでは追いつかないのではないか、と。せっかくタオルという便利なものがあるのですから、暑い盛りはそちらにお任せしました。そして誠に勝手ながら9月からは手ぬぐいにそのお役目を交代させましょう。

 ハンカチよりも汗を吸い、タオルのようにかさばらない。色やデザインもなかなか凝っておりますし値段もそれほど高くない。われわれ噺家はお正月など、ご挨拶代わりにオリジナルの手ぬぐいを配ったりしますが、のし紙のまんまきれいに保存されるよりは、たとえお手洗いのお手ふきでもいいから「使って」いただけると嬉しいです。

 噺家と手ぬぐい。噺の小道具として、高座に上がるときは必携ですな。懐に入れた状態で高座に向かう者、扇子とともに手に持っていく者、スタイルはいろいろですが、楽屋では登校前の小学生のごとく、手ぬぐいを持ったかどうかの確認をいたします。まれに、忘れて高座に上がったりすると大変です。まくらの段階で気づいた時には「手ぬぐいを使わない噺」に入ることを余儀なくされますし、手ぬぐいを使う噺に入っちゃってから気がついた場合には「どうやって手ぬぐいなしで表現しよう」と焦ったり、とにかく持って出るにこしたことはありません。

 ご承知の通り、手ぬぐいは噺の中で本や財布、莨(たばこ)入れ、紙、時には焼き芋などに変身いたします。扇子とともにいろいろなものに「見立てる」という立体的な効果です。いかにも「やってますよ」と大げさに演じるというよりは、ちょっとしたスパイスとしてさりげなく扱うと美しいですね。

 実はこの手ぬぐい、私が一番難しいなあと感じているのが「手ぬぐい」として使うときなのです。そのまんま使うだけなのに一番難しいとはどういうことかと疑問に思われるかもしれませんが、これにはわけがありまして・・・。

 一つは登場人物が手ぬぐいを使うとき。

 湯に入る時などはもちろん、職人を表現するときにも片手には手ぬぐい。その手ぬぐいの動きが感情の切っ先として大事な表現の要素になることもあります。涙を拭うときにも、手ぬぐいを懐から出して拭うのはそれだけの余裕がある涙です。どっとあふれ来る涙は、そんな間もなく長襦袢の袖口で拭われてしまうのですから。さりげない携行品であるからこそ、その人物の癖、性格を映し出す鏡になるわけです。

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