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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第11回 船徳
2007/07/27

若旦那とは親の築いた身代を食いつぶす道楽者
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 夏休みに入りました。

 もっとも、夏休みというのは学生さんだけの特権ですから、皆さんがその恩恵を受けられるのは朝の電車が少しすいているぐらいかもしれません。あとはもう一生夏休みだ!という人生を送っている方もいらっしゃると思います。私たち芸人も、言ってしまえば毎日が仕事だったり、夏休みだったりします。仲間仲間。そういう毎日をどれだけ充実して過ごせるかがその方の人生の力量、ということになりましょうかね。

 ちょっと宣伝、8月5日に私たちが所属する社団法人落語協会感謝祭が東京は台東区の谷中・全生庵にて行われます。噺家が手作りで一日お客様と遊んじゃおうという企画満載、是非落語協会のホームページなどをご覧になってお出かけください。もちろん私も会場でうろうろしておりますよ。

 前回の予告通り、今回は「船徳」についてのお話。

 落語の世界では「若旦那」といわれる人種がいます。世間では「二世・三世」とか「お坊ちゃん」とかいわれている人物ですね。世の中全ての人がそうとは言いませんが、落語ではこの若旦那、親の築いた身代を食いつぶす道楽者として描かれることが多いんです。  たたき上げの苦労人なら、この何の苦労も知らない若旦那に少なからず反感を覚えるかもしれません。でもね、賢い人はこういう自分にはない境遇の人から何かを得る図々しさを持っているはずなんですね。なーんも苦労がない、というのはある意味それだけで価値ですからね。

 さて、この「船徳」は真夏の代表的な噺です。前回の「青菜」が暑さの中にもある「涼」を描いた噺なのに対し、この噺はただただ暑い、暑苦しい噺です。とある船宿の二階に厄介(これを十戒の身の上と申します)になっている、半ば勘当状態にされている若旦那(徳さん)。船頭の苦労を知らない、甘ちゃんな徳さんは船宿の主が断れないことを知ってか知らずか、船頭になりたいと言い出します。

 八代目桂文楽師匠の言葉を借りれば「四万六千日、お暑い盛りでございます」という一言で、がらっと場面転換、ある男二人が船宿にやってきます。どうやら吉原へ遊びに行こうというのですが、歩くのも面倒と、船を出していこうという相談がまとまったようです。四万六千日、というのは観音様の縁日の一つで7月10日、これは旧暦ですから今で言うと八月の末、まさに暑い盛りです。ただいまの東京では新暦で行われており「ほおづき市」と聞けば「ああ、あれね」と思い出すのではないでしょうか。

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