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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第9回 オチついて笑いましょう
2007/06/29

 まもなく七月を迎えようとしています。わたくしごとですが、七月は勉強会を二つほど控え、現在のわたくしは新しく手がける噺のことで頭がいっぱいになっています。古典落語というのは噺自体をゼロから創る必要がないかわりに、演じるとなるとゼロから噺を覚え、ゼロからそのやり方を探っていかなくてはなりません。非常に手間のかかる作業ですから、是非ひとりでも多くの方に、そのネタおろし(初演)をごらんいただきたいものです。

 わたくしのホームページをごらんの上、是非是非お出かけください。

相変わらずの笑いに落語の神髄
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 さて、マクラから噺が始まったところまでお話ししました。噺が進んで行くにつれ気がつくことがあります。噺を噺たらしめている「演者」というものの存在です。最近では落語を文字にしたいわゆる「速記本」が多数出版されていますが、落語は文字になっただけでは落語とは言えません。実演されて初めて「落語」です。

 以前に「噺」というものは説明的な要素をなるべく排するというお話をしましたが、噺家はこの説明の部分をきっちり補って、お客様の想像の世界を広げてゆかねばなりません。演じることによって、登場人物の人間を描く作業がこれにあたります。

 「こんちはご隠居さんいますか」「誰だと思ったら八っあんかい、まあお上がりよ」

 八五郎はご隠居さんとどんな間柄なのでしょう、ご隠居さんは突然訪ねてきた八五郎をどういう気持ちで迎えるのでしょう。演じる者の心次第、感じるお客さんの心次第で数え切れないくらいの人間関係が生まれます。科学では決して解明できない、有機的なつながりを表現しなくてはいい噺とは言えません。

 ところで、噺の中にはお客様に笑っていただけるように組み込まれたせりふや仕組みがあります。仮にこれを「ギャグ」とでも呼びましょうか。このギャグによって落語は「面白い話」と認識されているわけなんですけれども・・・。

 「まあまあお上がり」「ごちそうさまです」「なんだいそりゃ」「だってまんまお上がりって」「まんまお上がりって奴があるか、まあまあお上がりって言ったんだ」「ああそうですか、まあまあですか・・・なんだい面白くねえ」「面白くねえという奴があるかい」

 文字で書いたら、どうですかね。つまらないですか?でもね、このフレーズ、落語の中でやると結構笑ってもらえるんですよ。もちろんわたしなぞはまだまだ未熟者ですから、まったく素通りされてしまう日もございます。「嘘だろ」ってぐらい笑いに包まれる日もあります。

 わたしの目標は、なんとか死ぬまでにこの言葉の面白さを全部、そしていつでも引き出して、登場人物の言葉に乗せてお届けすることなんです。

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