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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第8回 ご隠居さんいますか
2007/06/15

 突然ですが、わたくし柳家三之助は雨男です。

 お客様にお出かけいただく商売でありながら、自分の落語会の日は八割方雨降りで、これはもう一つの才能だと諦めています。梅雨時の落語会は雨を自分のせいにしなくてもいいので少し心が穏やかです。それにしても子供の頃は雨を鬱陶しいなんて思わなかったのに。雨があんなに楽しかった頃が懐かしいです。

 今日はまくらは抜きにしていきなり本題にずばっと入っていきたいと思います。

首を左右に振ることで登場人物を表現
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 「こんちは、ご隠居さんいますか」「おお誰だと思ったら八っあんかい、まあまあお上がりよ」「そうですか、それじゃあちょいと上がらしてもらいます」

 このやりとりはいわゆる長屋を舞台としたご隠居さん、八五郎のやりとりの代表的なものです。「道灌」「一目上がり」「つる」「雑俳」「寿限無」などあげればきりがありません。

 この二人の人物を噺家は一人で演じなくてはなりませんから、ちょっとした工夫があります。落語をごらんになったことのある方はもうご存じでしょう。噺家は人物が変わるたびに首を左右に振りながら噺をします。これを「上下(かみしも)」と読んでいます。高座の上手(かみて)と下手(しもて)に振るところから「かみしも」、お客様から見て高座の右側を上手、左側を下手と言いましてこれはわれわれ演者から見ると反対になります。噺家が左を向いたときが上、右を向いたときが下ということですね。

 一般的には「こんちは」と入ってくる八五郎は上手を向いてしゃべります。そしてご隠居さんは下手を向いて迎えます。上下は歌舞伎の舞台の位置関係を想像するとわかりやすいです。歌舞伎では外から入ってくる者は花道や下手の袖から上手に向かって入ってくることが多いです。そしてうちの中の者はすでに上手側にいて下手へ向かって台詞になります。ですから下手が外、上手が奥というふうに位置を決めます。

 また同じうちの中にいる場合は、いわゆる目上の者が上手にいるというふうに整理します。夫婦でいる場合は亭主が上、オカミさんが下という決まりです。

 もっとも皆さんのうちでは立場が反対かもしれませんが(笑)。

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