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噺家・柳家三之助の「落語の世界へようこそ」
第5回 前座のお仕事
2007/04/27

 いかがでしたか、今年の桜は・・・なんという書き出しはインターネットの世界では難しいものです。日本じゃない場所でお読みになっているかもしれませんし、日本でもまだこれからという場所もまだまだあります。読み手の皆さんを感じながら書こうとは思うのですが、なかなか難しいものですな。

 今回もまたまた前回の続き。何しろ前座修行はやることが多いもんで、書くこともたくさんあるのです。

寄席囃子の神髄は“適当に”
噺家・柳家三之助
噺家・柳家三之助

 寄席で毎日鳴り響く太鼓、出囃子という三味線にのって演奏される太鼓、あれはみんな前座さんが叩いております。何百曲もある寄席囃子のどの曲でも叩けるように稽古をします。

 すごいでしょ?でもホントはすごくないんです。全ての曲が完璧に頭に入っているのは三味線を弾いている下座さんだけ。われわれはいくつかの太鼓の叩き方の組み合わせから適当に三味線に合わせて「あしらって」いるのです。

 寄席囃子で演奏される曲は邦楽だけでなく洋楽・民謡・演歌・童謡・プロレスのテーマソングまでいろいろあります。これらの全てを懐深く取り込んでいる寄席囃子の神髄はこの「適当に」というところにあるのです。

 当然ですが「適当」というのは教えられません。毎日寄席で働きながら寄席囃子を体に浴び続けることで先輩のやり方を盗み、センスを磨いていく。こんなやり方ですから、個々の噺家には太鼓の上手下手が歴然と表れます。下手だからといって日勤教育が施されるということもなく、下手は下手なりに自分の太鼓のスタイルを探していく。口うるさい世界でありながら、どことなく自由な考え方も持っているんです。

 もうお気づきかと思いますが、みーんな「噺」に通ずることです。

 一般的に太鼓の上手い噺家は、噺も上手いなんということを言われます。リズム感、音感、神経の配り方、そういうことが太鼓にも噺にも生きるんだコノヤロー、なんというお小言を頂戴しながら、なんだかんだみんなそれなりに叩けるようになっちゃうんですから、寄席の修行というものは不思議です。

 寄席囃子のことはまた別の機会にじっくりお話ししましょう。

筆者プロフィール

柳家三之助(やなぎや さんのすけ)
1995年に十代目柳家小三治に入門。「小ざる」の名で前座修行ののち、1999年に二ツ目昇進。柳家三之助と改名する。都内の寄席や全国の落語会で精力的に高座を勤める傍ら、インターネット上の様々なコンテンツで落語の普及に努める。興味のあることは片っ端から手を出し、雑誌などのコラムの執筆のほか、2006年に翼のプロとの対談集「オールフライトニッポン(風濤社刊)」のほか、Yahoo!インターネット検定・落語「通」検定の問題作成、公式テキスト「粋に楽しむ落語(インプレスジャパン刊)」を執筆した。最近はウイスキーをこよなく愛する日々である。
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