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ダイヤモンドヘッドを越え,疲れと暑さの世界へ

スタートから4時間。暑さが体を襲う

海沿い
コースは海沿いに変わる。もう半分は過ぎた

 菱沼さんはスタート直後と表情こそ変わらないが,視線が下を向いている。ヒジを使って上半身の力を引き出すという,白戸さんのアドバイスを実行できない。とにかく距離を稼いで,後半をどうやってやり過ごすかが今の課題だ。

 ホノルルマラソンはゴールするのが遅くなればなるほど,どんどん辛くなる。トップ選手はハワイの強い日射しにさらされることなく涼しい気温のままゴールするが,スタートから4時間を超えると暑さとの戦いが始まる。菱沼さんはエイドステーションでは必ず立ち寄り,スポーツドリンクを飲んでいる。また,タイミングを見計らいながらアメや羊羹で栄養補給をして,後半戦に備えた。ここで面倒くさがって水や栄養を補給しないと,後半戦になって本当に体が動かなくなる。

アイシングをするランナー
コース横に用意された氷でアイシングをするランナー

 15マイルも過ぎ,残り10マイルになって間もなく,「一人になりたい」と言うと菱沼さんは併走スタッフから離れて,一人で走り始めた。再び序盤のペースを取り戻したかに見えたが,1マイルほどで歩いてしまう。それでも一人になってからは,自らを律するように歩く距離を短くし,少しでも走るように心がけているのが分かる。そのせいか,人を抜くようにもなってきた。

 これまで数え切れないほど多くの人に抜かれてきたが,抜く人の数が増えたのは,スタートしてから初めてのこと。道ばたで休んでいる人やアイシングをしている人も多くなってきた。「5キロ先には自分も同じようになるかもしれない。今はアキレス腱に痛みが走ったり,ふくらはぎが肉離れになるのが一番怖いな。1マイルがすごく長く感じられる」と菱沼さん。「ゴール後のビールが美味いだろうなんて考える余裕はないね」。最後の闘いが始まろうとしていた。

(文,写真=菊池武洋)

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