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全米大ヒットの「ダークナイト」 なぜ日本では受けなかったのか

高密度フィルム「IMAX」を使用

 本作をまだ見ていないという方で、BD再生環境をお持ちならば、レンタルでも構わないので、ぜひBD版で見てほしい。DVDとの圧倒的な画質差が認められるからだ。

 本作のマスターフィルムの一部には、「IMAX」といわれる高密度フィルムが使用されており、その情報量や精細感、階調感が圧倒的で、その特長が活かせるのがフルHD映像だからである。

 冒頭、空撮から一棟のガラス張りのビルにカメラが寄っていく。その鮮明な映像、屹立としたシャープな輪郭と遠近感は、IMAXに負うところが大きい。銀行襲撃団が被るピエロのマスクのペイントや薄汚れた具合など、リアリティーも白眉だ。大画面で楽しめれば、なおさらその凄さが実感できることだろう。

 サウンド面での見所は至るところにある。例えば香港の悪のシンジケートのビルからボスを連れ去るシーンでは、林立するビル群の中を颯爽と飛ぶバットマンのマントの音、ガラスの粉砕音の細かさ、貨物機の機体の巨大さが伝わるような覆い被さる感じのサラウンドが素晴らしい。

 圧巻はチャプター21、夜のゴッサム・シティーでのバットマンとジョーカーの対決。夜の静寂を突き破るトレーラーの走行音やヘリコプターの崩落音。バットポッドの機械的モーター音を遮るように連射される機関銃。バットマンの心理が手に取るようにわかるのか、ジョーカーの不敵な笑みが恐ろしい。

 チャプター23、バットマンとジョーカーが一対一になる取り調べ室のシーンもクライマックスのひとつ。殴られ、飛ばされてもなお、不気味さを一層顕にするジョーカー。クチャクチャと立てるその舌なめずりのような音が生々しく、ヒース・レジャーの怪演の凄味が伝わってくる。こういう音はテレビ内蔵スピーカーからはリアルに再生できないだろう。病院の大爆破も、大破するヘリコプターも、このクチャクチャ音の気持ち悪さには歯が立たない。

 昨年の日本映画界は、洋画の大ヒット作がなかったといわれている。「ダークナイト」のような凄まじいメッセージを内包した作品が名実ともに支持されるようになるまでには、もう少し時間がかかるのかもしれない。

(小原由夫/オーディオ・ビジュアル評論家)
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