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全米大ヒットの「ダークナイト」 なぜ日本では受けなかったのか

娯楽映画に対する国民性の違いだろうか

 さて、そこでだ。どうして日米でこれほど興行成績に差が出たのか。

 地方にもシネコンが多数進出し、映画を楽しむインフラがかつてとは比べものにならないほど整備された現代の日本で、映画館に足を運ぶ人の数が大幅減少したということを裏付ける数字はない。事実、昨年の邦画の興行収入は、ここ数年間で記録的な好成績を残しているのである。

 非常に抽象的かつ曖昧な言い方になるが、これは娯楽映画に対する国民性の違い、要求の違いに起因するのではないだろうか。つまり、映画に何を期待するのか、ということに尽きる。

 それはひとときの快楽なのか、生きることの示唆なのか、社会に対する啓示なのか、人間関係のヒントなのか…。「ダークナイト」は、そのすべてを包含しているといって過言でない。だから傑作といえるのだが、作品の背後に忍ばされたプロットの凄さに気付いたアメリカの観客は狂気乱舞し、日本の観客はそこに価値を見出ださなかった。その違いが出たように思う。

 もちろん、いくつかの他の要因も考えられよう。「バットマン」に対する愛着の温度差、支持する年齢層の違いは、日米間では致し方のないところだ。ウルトラマンや仮面ライダーと比較してみればわかりやすい。アメリカ人にとって、バットマンはやはり「おらがヒーロー」なのである。

 不慮の死を遂げたジョーカー役のヒース・レジャーの取り上げられ方も大いに影響していよう。その鬼気迫る怪演は、主役のバットマンを完全に食ってしまっている。彼の地では「ブロークバック・マウンテン」の演技が高く評価され、期待の若手俳優の一人で人気上昇中という矢先だった。だが、日本での知名度はいまひとつ。自殺か事故死か謎をよび(狂気を帯びた演技が薬物によるものだという噂が流れた)、マスコミを巻き込んで大騒動になったことも興行成績に作用したことは間違いない。

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