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永遠のジャズ!ハービー・ハンコックが 実現したVSOPとは
ベスト オブ V.S.O.P.
ベスト オブ V.S.O.P.

 「VSOPというのは、“Very Special One-time Performance”の意味だ。1976年に、それまでの自分の活動を振り返るコンサートをニューヨークでやった。当時、わたしが持っていたバンドのほか、過去に率いていたセクステットや、マイルス・デイヴィスのクインテットなんかを再現させる内容だった。だから、最初はマイルスも入る予定になっていた。けれど、直前になってキャンセルされてしまってね。そこで、急遽フレディ・ハバードに入ってもらった。フレディ、ウエイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス、それにわたしの5人でそのときは演奏した。1回きりのコンサートだったから、コンサートのライヴ・アルバムを出すときにタイトルを“VSOP”としたのさ」(ハービー・ハンコック)

 ハービー・ハンコックが1976年の「クール・ジャズ・フェスティヴァル/ニューヨーク」で繰り広げたこのときの演奏は、コンサート自体の反響とアルバムがもたらした話題もあって、評判が世界を駆けめぐる。その結果、1回だけのコンサートのために結成されたクインテットは、1977年と79年に再結成され、ワールド・ツアーを敢行。いずれの年も来日を果たし、「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」に登場した。ときはマイルス・デイヴィスが引退状態にあった時代だ。VSOPクインテットの演奏からマイルスの姿をオーヴァーラップさせたファンも多い。

 「VSOPクインテットはマイルス・クインテットなくして生まれなかった。でもわたしたちは、だからこそマイルスのクインテットで演奏していたサウンドからどれだけ離れることができるか──そういう気持ちで演奏に臨んでいた」(同)

 マイルスのクインテットから発展して結成されたグループ──それがVSOPクインテットである。グループは1980年代になってウイントンとブランフォードのマルサリス兄弟をフロントに迎え、VSOP IIとしてツアーしたこともあった。けれど、ぼくたちにとってのVSOPクインテットは、やはりマイルス・クインテットの面々が揃ったものを指す。

 それにしてもクインテットの人気にはすさまじいものがあった。当初, 最初で最後といわれた1977年のツアーは、6月27日のミネアポリスでスタートする。一行は全米20数ヵ所を回り、最終公演の地日本へやってきた。来日したのはコンサートの前日、すなわち7月22日のことだ。彼らの人気の高さは、日本公演に限ってみても、あっという間にチケットが完売してしまったため、急遽昼の部が追加され、それもまたたく間に売り切ってしまった事実によって推測できるだろう。

 彼らがアメリカで行なったステージの模様は朝日新聞の夕刊で大々的に取りあげられるなど、前景気もおおいに盛りあがり、たった1日のコンサートに多くのファンが期待を寄せていた。けれど、コンサートには行きたくても行けなかったひとが大勢いる。しかしこのときのライヴ・アルバムが発表されたことで、VSOPクインテットのステージが聴けなかったひとたちも、後日コンサートが追体験できることになった。

 それにしてもこのライヴは歴史に残る素晴らしいものだった。初来日時の演奏からは、マイルスの音楽性をベースにしてはいるものの、各人の個性やスタイルが奔放な形で表現されていた。まさにマイルスからどれだけ離れた演奏ができるか──そこに主眼が置かれていたように思う。そして、彼らは驚くほどにオリジナリティ豊かな演奏を聴かせてくれた。

 ライヴではミュージシャンの意欲とオーディエンスの期待が見事に一致し、コンサートの場においてたぐい稀な熱気が生み出されていた。演奏の凄さはその後についてくるものだ。いかにその場の雰囲気が創造的か、それがコンサートの内容を左右する。その視点から当日のコンサートを振り返れば、この日行なわれた2回のライヴはどちらも優劣がつけ難い。田園コロシアムにクリエイティヴな空間が生まれ、それはミュージシャンとオーディエンスが一体となって作りだした熱気によって支持されていた。こんな場はめったに生まれない。

 1970年代の最重要コンボとしていまも語り継がれているVSOPクインテットは、1977年と79年の2度にわたるワールド・ツアーで多くのひとびとを魅了し、1980年代のモダン・ジャズ再評価に繋がる実績を残した。1980年代に多くのひとが再びモダン・ジャズを評価し、ストレートなビートの中にジャズの本質を見出したのも、伏線としてVSOPクインテットの成功と大反響があったからだ。

 モダン・ジャズの復権を促進させたウイントン・マルサリスの登場以前に、ハンコックたちがこうしたオーソドックスな演奏によって、多くのファンをストレートなジャズに呼び戻していなかったら、ウイントンがあれほどのセンセーションを巻き起こせたかは疑問だ。いずれにしてもVSOPクインテットの成功が1980年代のモダン・ジャズ再評価に繋がっていったことは間違いがない。

ベスト オブ V.S.O.P.

 感動的なコンサートは過去にいくつか体験しているし、クリエイティヴな内容のコンサートも一度ならず目撃することがあった。けれど異様な期待感の中から、その期待を上回り、しかも驚くほどの音楽的な充実、緊張感、そして創造性が一体となった演奏に接することはそれほど多くない。その数少ないコンサートがVSOPクインテットによる2回の日本公演だった。

 1976年に顔を揃えたこのオールスター・グループは、77年と79年に日本公演を含む大規模なツアーを敢行し、それらをとおして数種類のアルバムを残している。レパートリーは毎回似たようなものだ。その中からベスト・パフォーマンスを集めたのがこの作品である。

 フュージョンが猛威をふるっていた時代に残された最強のアコースティック・ジャズ。名手がおのれのプライドを賭けて挑んだ演奏は、20年以上の歳月を経ても色あせたところがまったくない。これぞジャズが持ちえる普遍性を記録した1枚だ。

今回紹介したアルバム
ベスト オブ V.S.O.P.
『ベスト オブ V.S.O.P.』
\2,242(税込み)
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小川隆夫(おがわ・たかお),整形外科医・JAZZジャーナリスト。

1950年生まれ。60年代から70年代初めにかけての学生時代,渋谷や新宿のジャズ喫茶に通い詰める。ニューヨーク大学の大学院在学中にアート・ブレーキーやマルサリス兄弟など数多くのミュージシャンと知り合う。帰国後,『スイングジャーナル』誌の連載を持つとともに,JAZZを中心に約3000本のライナーノーツを手がける(ギネス申請中)。マイルス・デイビスや,ブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンの来日時の主治医を勤めるなど,現役の整形外科医としても第一線で活躍中。ブルーノート完全コレクターとしても世界的に知られる。JAZZ関連の著書は『マイルス・デイビスの真実』(平凡社),『ブルーノートの真実』(東京キララ社)など。JAZZブログは,「Keep Swingin'」。
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