Q: 介護の段階からけんかが始まっているケースも多いようです。 A: 妹が親の面倒をみていた場合で、離れて住んでいた姉は、もっと早く入院させたら助かったかもしれないと思い、妹を攻撃するようなケースがあります。姉には自分が親の世話をしなかったという負い目が屈折して出ているのです。 妹は、親は病院が嫌いだったから、できるだけ家で世話をしてやりたいと思い、疲れるからだに鞭打ってがんばってきたのに、その気持ちを姉は理解しない、と怒る。 家族の死、というのは大きなことですから、遺された家族から平常心を奪います。ちょっとしたことで気持ちがささくれだったりします。誰かが呆然として何も手がつかない状態にいると、もう一人がこんな忙しいときに気がきかない、といらいらする。 お葬式というのは極めて人間的家族劇でもあるのです。それぞれの家で、それぞれの関係でいろんな人間模様が現れます。特にきょうだいには遠慮する気持ちが少ないので、ちょっとしたことが「けんか」を招くのです。あるいは皆が気をつかいあって、何か遠慮しあったようなお葬式もあるのです。 高齢の親が死ぬとき、その子どもたちも高齢者である。孫でさえ成人ということがあります。孫から見るとなんで親戚が葬式に口を出すのか、と思うかもしれません。しかもその意見は孫からみるとかなり無茶苦茶ということもあります。 しかし、叔父さんも伯母さんも、故人である祖母の子どもという意味では父と同じ立場なのです。年老いたとはいえ、親の死で混乱した感情にとらわれて不思議ではないのです。 こういう混乱もまた、人が死ぬというお葬式がもたらす風景の一つなのです。 (碑文谷 創)
筆者プロフィール
碑文谷 創(ひもんや・はじめ) ジャーナリスト。1946年岩手県生まれ。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社勤務の後、1990年表現文化社(当時・表現社)設立。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。 著書は『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)『「お葬式」の学び方』(講談社)ほか。監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。共著『仏教再生への道すじ』(勉誠出版)ほか。
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