Q: 日本には「ポックリ信仰」というものがあると聞きます。 A: 日本では、昔望んだ長寿化が達成された今、長寿化に伴うさまざまな問題が出てきました。東京巣鴨の地蔵通り商店街は「お年寄りの原宿」と言われ連日お年寄りで賑わっています。そこにある曹洞宗のお寺高岩寺の本尊は「とげぬき地蔵」と言われ「霊験あらたかな延命地蔵尊」として人気を集めています。 この寺には観音様がまた祀られており、自分の身体の悪い箇所にあたる観音像の箇所を洗うと治るという信仰から「洗い観音」と言われています。 いつかテレビでここに集まるお年寄りにインタビューしていましたが、「寝込んで死にたくない、逝くときはポックリが理想」と口々に言っていたのがとても印象的でした。安楽往生を祈願する寺院は全国各地にあります。 「いつか死ぬのだが、長患いして家族に迷惑をかけたくない」という高齢者の切実な思いを知ることができます。 「嫁いらず観音」もあちこちにあります。「長患いして嫁に面倒をかけたくない」というお年寄りの思いが見られます。 今の高齢者は30~50代には「嫁」として舅(しゅうと)や姑(しゅうとめ)と同居して暮らし、世話をしてきました。 あの苦労は自分のときでたくさん、年寄りになった自分はできるだけ元気に自分で生きて、長患いして寝込み、「嫁(息子の妻)」に面倒をかけないように生きて、逝くときにはポックリと死にたい、というささやかな希望があります。 しかし、今では年寄りの世話をするのは「嫁」から「娘」へと変化しています。「娘いらず観音」と名前を変えるのかもしれません。 「超高齢化」はさまざまな問題を引き起こしており、しかもその問題はこれから本格化するのです。死や葬儀もこの社会の変化と深く関係しています。 (碑文谷 創)
筆者プロフィール
碑文谷 創(ひもんや・はじめ) ジャーナリスト。1946年岩手県生まれ。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社勤務の後、1990年表現文化社(当時・表現社)設立。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。 著書は『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)『「お葬式」の学び方』(講談社)ほか。監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。共著『仏教再生への道すじ』(勉誠出版)ほか。
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