香典を「辞退」から「面倒」へ
この社葬の例を「しっかりした家では香典を受け取らない」と誤解した京都の人が、「わが家は香典をもらわないと葬儀を出せない家ではありません」と香典辞退に動きました。それが大阪に行くと、「香典を出すのもお返しするのも面倒」と広がりました。 私は「香典」は「弔意の表明」が本質と理解しています。「香奠=香を供える」が最初の意味です。お返しを期待したものではありません。親しくしていた大先輩のご家族から手紙をいただき「葬儀は近親者で済ませました。香奠はご辞退申し上げます」と書かれていたときは、自分の気持ちのやりどころがなく困惑した経験があります。しかも、香典をいただいた方が葬儀費用は大きくなりますが、遺族の自己負担額は少なくなります。人の気持ちを受け止めるというのは大事なことであると思います。 香典についてはいつまでという期限はありません。死亡を知ったのが1ヵ月後でもいいのです。手紙を添えて現金書留で送ってもいいのです。 表書で悩む方も多いです。「実用書」には「御霊前」はどの宗派でも使えます、と書かれていることが多いですが、仏教でも浄土真宗は霊を認めていませんので「ご仏前」が多いでしょうし、キリスト教のプロテスタントも「お花料」です。神道でしたら「お玉串料」でしょうか。 私は仏教で葬儀をする場合は「御香料」「御香資」と書くことが多いです。 四十九日を過ぎたら「御仏前」というのも、死者は四十九日間修行をして四十九日に成仏するという仏教の民俗的理解から来ています。 私は一周忌でも「御香資」などと書きます。封筒はいずれも白と自分では決めています。水引も文化でしょうが、そうしたややこしいのは使いません。葬儀のとき、関東の水引は黒白ですが、京都では黄白とややこしいですから。 (碑文谷 創)
筆者プロフィール
碑文谷 創(ひもんや・はじめ) ジャーナリスト。1946年岩手県生まれ。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社勤務の後、1990年表現文化社(当時・表現社)設立。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。 著書は『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)『「お葬式」の学び方』(講談社)ほか。監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。共著『仏教再生への道すじ』(勉誠出版)ほか。
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