洋型霊柩車が明らかに優勢
だが1980年になると再び米国型の霊柩車が使われるようになりました。この時代のアメリカの霊柩車は戦前と違って落ち着いた黒の寝台車型です。リムジン型と言ったほうがいいかもしれません。これが「洋型霊柩車」として登場します。 1989年の昭和天皇の葬儀で洋型霊柩車が使用され話題になったことが最も大きく影響したように思います。また各地で新しい火葬場ができると、地元住民と行政が「宮型霊柩車乗り入れ禁止」の協定が相次いだことも影響しました。いまでは宮型霊柩車に対して洋型霊柩車が明らかに優勢を示すようになっています。 宮型霊柩車の衰退はあからさまに死を示すような光景を嫌がってのことかもしれません。あるいは、葬儀でもって社会にデモンストレーションするがごとき風習が後退したことを示すのでしょうか。 しかし戦後の高度経済成長期に、戦中はろくな葬儀もできなかった悔しさから、人並みの、立派な葬儀を、という願いが宮型霊柩車の全盛をもたらしたということも覚えておいていいでしょう。死後のお浄土への旅立ちを飾って上げたいとの民衆の想いの結晶でもあったのです。いまは死後への期待もはなむけも不要な時代になったというのでしょうか。 宮型霊柩車が街から姿を消しつつあるのはどうも趨勢のようです。葬儀が非日常であることを示す光景がいま一つ姿を消そうとしています。 (碑文谷 創)
筆者プロフィール
碑文谷 創(ひもんや・はじめ) ジャーナリスト。1946年岩手県生まれ。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社勤務の後、1990年表現文化社(当時・表現社)設立。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。 著書は『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)『「お葬式」の学び方』(講談社)ほか。監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。共著『仏教再生への道すじ』(勉誠出版)ほか。
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