ここから本文です

<葬祭編:第18回>「千の風になって」をどう読むか?

葬式でこの歌が流れるのはどうか

 もう1つは「死ななかったのです」と死の事実を否定していることである。大切な人を失い、悲嘆(グリーフ)にある人の歩みは「グリーフワーク」と呼ばれるが、その第一歩は、辛いがその死の事実を認めることから出発する。その死を曖昧にしてはいけない。

 そしてグリーフワークの完成は「死者を忘れること」ではなく、死者を心の中で位置づける、死者を大切な存在として自らの心に再生することである。

 もっとも、この詩自体を批判することは不当であることは承知している。一人の女性の想いが表現されたことで、そこには温かな死者への愛着が表現されているからである。それがまた多くの支持を集めたのだろう。

 だが、流行としての「千の風になって」現象にはこうした問題点がある、ということは指摘しておくべきだろう。

 最近の葬式でこの歌が流れることがある。葬式は死の事実をつきつけ、悲しみを認め、しかし死者との関係が終わるわけではないことを告げるものである。

 大切な人との死別を充分に悲しむということが否定されることはあってはならない。 遺族や身近な人には悲しみ、泣く権利があるのだから。

(原詩出典:1996 by Souvenir Press Ltd 2006(twice) )

(碑文谷 創)
この記事のバックナンバーを読む
筆者プロフィール
碑文谷 創(ひもんや・はじめ)
ジャーナリスト。1946年岩手県生まれ。東京神学大学大学院修士課程中退。出版社勤務の後、1990年表現文化社(当時・表現社)設立。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。
著書は『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)『「お葬式」の学び方』(講談社)ほか。監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。共著『仏教再生への道すじ』(勉誠出版)ほか。

前のページへ 1ページへ 2ページへ 3ページ"
 
「セカンドステージ マガジン」 配信開始
セカンドステージでは,HTMLメール「セカンドステージ マガジン」の配信を始めました。毎週1回水曜日に配信いたします。
サイト上の更新情報やイベント,セミナーの情報をお送りするとともにメールならではの特典,イベントの提供をいたしていく予定です。
メール配信をご希望の方はこちらのページからで配信登録をお願いします。

→バックナンバーはこちら

セカンドステージ メールマガジン
サイトマップを見る
セカンドステージ連載一覧


日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る