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天野宏の実用・漢方早わかり
自律神経失調症の多彩な症状に漢方
2006/03/16

 社会的,心理的なストレスの増加に伴い,ビジネスパーソンの中には,自律神経失調症でつらい日々を送っている人も少なくないようである。自律神経失調症の症状としては,疲れやすさ,だるさ,めまいや頭痛,頭重感,動悸(どうき)――など,さまざまなものが挙げられる。

 さらに,腰痛,しびれ感,食欲不振,便秘,下痢,不安,不眠,抑うつ――といった,さまざまな全身症状が現れることもあり,症状は人によって大きく異なる。病院で多くの検査を受けても,特に臓器には異常が認められないのが特徴だ。

 西洋医学では,精神的および肉体的なストレスによって,自律神経が調子を崩して,さまざまな症状が起こると考える。そして,心理療法と,体の不調に応じた薬や精神安定剤などを用いて治療を行う。

 漢方医学では,西洋医学のように,単に自律神経の異常によって症状が生じるとは考えない。それぞれの症状が「気」のめぐりが悪くなって起こっているのか,あるいは「血」か「水」がうっ滞しているのか,症状別に詳しく調べて薬を選んでいく。

 自律神経失調症の人は,一般に虚証タイプが多く,「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」(関連記事:動悸や息切れに「柴胡加竜骨牡蠣湯」),「女神散(にょしんさん)」,「加味逍遥散(かみしょうようさん)」,「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」,「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」,「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」(関連記事:「苓桂朮甘湯」はめまいの特効薬)などの漢方薬を使いわけていく。

 柴胡加竜骨牡蠣湯は,体力がある人で,胸部の圧迫感やわき腹の感覚異常があり,肩こりのほか,不安や神経過敏などの症状があるときによく用いられる。

 女神散は,古くは陣中での神経症を治すことから,武士の精神安定剤ともいわれた漢方薬である。のぼせ,不安,動悸,不眠がある人が対象で,特に女性の産前・産後の神経症,更年期の精神不安などに用いられる。

 加味逍遥散は,体が弱っていて疲労感,肩こり,めまい,頭痛がある人に向いている。半夏白朮天麻湯には,胃の中の水分のうっ滞を除き,皮下にたまった水毒を取り除く働きを持つ生薬が含まれている。胃腸が弱く,下肢が冷え,めまい,頭痛がある人に適している。

 柴胡桂枝乾姜湯は,体が弱く,冷え症,貧血気味で,動悸,息切れ,神経過敏,不眠,神経症の症状があるときに使う。苓桂朮甘湯は,体力が低下している人で,動悸,立ちくらみ,めまい,ふらつきのほか,頭痛,のぼせ,足の冷えがあるときなどに良いとされている。

 多彩な症状がある自律神経失調症に対し,一つの薬方で複数の作用を持つ漢方薬に寄せられる期待は大きいと言えるだろう。

(天野 宏)
天野 宏 (あまの ひろし)

1971年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。日経メディカル副編集長,日経メディカル開発編集部長などを経て,現在フリーランス医療ジャーナリスト,薬学博士,薬剤師。
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