見方を変えれば海外出張帰国直後の貴重なデータ
そして翌々日の午後,「Mさん,健康管理センターから電話ですぅ」と言われたので電話に出てみると,保健師から「Mさんですか,先生がお手すきでしたらご足労願いたいといってますけど」とのこと。Mさんは「はい,すぐ行きます」と電話を切り,急いで健康管理センターに向かいました。 「やっぱり出張帰りの健診は悪い結果だったんだ,電話呼び出しになったことなど1回もなかったのに」と,ドキドキしながら健康管理センターに駆け込むと,産業医氏がニコニコしながら迎えてくれました。Mさんは開口一番,「明日から入院ですか?」と切り出すと,産業医氏は「別にどこも異常なかったよ」とそっけなく返答。Mさんは,「それじゃ,なんで呼び出したの?」と聞くと,産業医氏は「異常なしを早く伝えたかっただけさ」。 Mさんの検査データを過去10回分パソコン画面に出して見せてくれた産業医氏の話を要約すると,以下の通りだった。今回のデータはどこも異常なし。検査時の背景は過酷な海外出張後で,異常値がでないという保障はなかったが,幸いにもすべて正常範囲内だった――。 「まだまだ体力は残っている。もう倍くらい働いても大丈夫だよ。担当役員にはもっと働かせても問題ないって言っとくよ」(産業医氏)。「勘弁してよ,もういい歳なんだから」(Mさん)。「いやいや最近のヤワな新入社員なんかより,はるかにマシだよ」(産業医氏)。 健康診断は学校の通信簿や成績表とは違います。オールAでなければならないわけではありません。データは健診を受けたときの条件で左右されますので,海外出張直後にはどうなっているのかを知ることも健康管理上大切なことということになります。 (鷲崎 誠=東京地下鉄株式会社保健医療センター所長)
筆者プロフィール
鷲崎誠(わしざき・まこと) 医学博士。昭和大学医学部卒業後,虎ノ門病院病棟医・専攻医,順天堂大学呼吸器内科講師,伊勢丹健康管理センター所長を経て,東京地下鉄株式会社保健医療センター所長。虎ノ門病院健康管理センター非常勤嘱託医,21健医総研主任研究員を併任。日本産業衛生学会代議員,日本サルコイドーシス学会理事・幹事,日本呼吸器学会専門医,日本内科学会認定医,日本人間ドック学会認定指定医。著書に「健康診断・人間ドック『気になる』疑問」,「日頃気になる 体のあのこと この症状」などがある。
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