

![]() ![]() 2005/11/21
人生の転機は,訪れるべくして訪れる。70歳の定年まで12年を残して大学を辞し,地ビールとパンの工房を立ち上げた馬場さんの場合もそうだ。決心はあったが,勢い込んでのことではない。そして,幸運なことに,馬場さんの姿勢に共鳴してアドバイスしてくれる専門家が出てきたのである。 地ビールなんてやめておけ
生まれ故郷の近く,豊かな里山の地・埼玉県小川町に転居し,無農薬,自然肥料の野菜を育て,小麦と雑穀を栽培して11年。ふと気がつけば,まわりに4軒あった農家はすべて,いつの間にか麦作も雑穀づくりもやめていた。馬場さんは,なんとかしなければと思った。 うどんやパンの製粉には手間と費用が嵩むが,粉砕ではなく破砕で出来るビールなら,自家製の小麦を他人の手を借りずに活用できる。麦と雑穀で醸す地ビールがビジネスとして成り立てば,ことによったら地域の人たちも後に続いてくれるのではないか。そんな夢も抱くようになった。 とはいえ,今どき地ビールが商売になるのか。1994年の規制緩和でビールの年間最低醸造量が大幅に引き下げられたとき,全国の中小メーカーが地ビール業に参入し,ちょっとしたブームになった。だが今では,品質の良いものを出している数社だけが生き残っている程度だ。
「もう分かっていました。パンは,ことによったら採算が取れるかもしれないけど,ビールは手間賃どころか,下手をすれば投資した資本も回収できないだろうと。それで,投資額を最低限におさえるために,すべて自分でやるしかないと考えました」。自分でやるといっても,特殊な分野だけに,よく分からないことが多い。そこで,地ビール業界に詳しいコンサルタント何人かに相談した。全員が「やめておけ」と口を揃えた。 しかし,1人だけ,「なぜ儲からないと分かっているのに,やりたいんだ?」と興味を示してくれる人がいた。馬場さんは「原料から工房の建設,役所への申請に至るまで,何から何まで自給するのが夢。これを軌道に乗せることを通じて,地域の麦作農業の復活まで視野に入れている」と伝えた。 「そしたら,それは面白いと言ってくれたんです。そのコンサルタントは地域再生の専門家でした。手伝うけれども,事業にはならないんだから,自分はボランティアでやるというんです。同時に,いろんな分野の専門家をボランティアで募集して,そういう人たちの力を結集して立ち上げようと提案してくれました」。
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