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本当にやりたい仕事って何
異色の営業スタイルを武器に一人で起業<その1>
2005/07/13

 定年になったら,退職金などを資本として会社を設立したり,何かの商売を始めたいという希望を持っている人は少なくないだろう。しかし,失敗して,なけなしの退職金を使い果たしてしまったなどという話を耳にしたりすると,夢は夢として棚上げしてしまい,あらためてどこか再就職先を探すか,仕事をしない悠々自適の生活を選んでしまうということになりがちだ。

 そんな中,ビジネスマンであれば,誰しも長年培った経験と能力・人脈を持っているはず。それらを生かすことで十分にやっていけるはずだとの信念を持って独立した人物がいる。そして,自身の経験を基に,リタイア世代に向けて,ぜひ得意分野で独立しようと呼びかけている。今回は,そんな肝付博昭さん(64歳)を紹介しよう。

営業経験を生かした支援サービスを提供

 肝付さんが始めた事業は,中小企業の営業部門支援事業。会社名を「有限会社新規事業開発」と名づけた。まず,名前がユニークだ。

 「中小企業の中には,優秀な技術や製品を持ちながら,肝心の営業力が弱くて伸び悩んでいるところが少なくありません。私が手がけているのは,そういう企業と業務委託契約を結び,営業活動をバックアップすることです。ただ,私の支援は単に営業担当者の一人として既存のルートで活動するのではなく,異業種に属する企業に対して,新規事業として手がけることを提案し,それによって製品の販売チャネルを増やしていくやり方をとっています」。

 この営業スタイルを,肝付さんは“新規事業開発型営業”と呼んでいる。独立するにあたって,それをそっくり社名にしたというわけだ。

 新規事業開発型営業とは,例えば,こうだ。A社が異業種のB社と業務委託契約を結んだ場合,A社は製品を丸投げするのではなく,製品を提供する側の責任としてA社の持つ販売ノウハウを公開し,キャンペーン販売などの販促活動もA社が全面的にバックアップする。そうすることで,提案を受け入れるB社は,それほど人員を増やす必要もなく,通常の本来の営業活動の延長として,より大きな売上げを確保できる道が拓けるというわけだ。

 肝付さんが現在,業務委託契約を結んでいる企業は5社ほど。業務委託というと,通常は業績に応じたインセンティブ方式がとられることが多いが,肝付さんは契約をもとに,月々一定額を費用として請求する報酬月額契約方式をとっている。こうした特殊な契約を結ぶことができるのも,肝付さんと契約企業との間に緊密な信頼関係が築かれているからなのだ。

定年まで勤めた会社での蓄積が資産

 新規事業開発型営業というスタイルは,肝付さんが定年までお世話になった総合家電メーカー・シャープ株式会社で,38年間にわたる営業活動の一環として身につけたものである。

 シャープの営業部門にあって,肝属さんは入社後しばらくは,自社製品の販売先の確保を目的にした営業活動に従事した。ある地域をモデルに,直営の小売店網の開設に取り組んだこともある。しかし,自社製品を持ち歩いて買ってくれる人を探す営業は非効率的。結局は,直営の販売網づくりも実現できずに終わってしまった。そこで,新しい営業方法として新規事業開発型営業が発想され,肝付さんも,その一員として開発推進部に配属されることになる。

肝付さん  「電器店に,ウチの製品を扱ってくれませんかと営業するのは,電機メーカーなら当たり前のことです。しかし,私たちが狙ったのは,家電とは全く縁のない業種を新しい販売チャネルとして取り込むことでした。たとえば,自動車販売会社,石油販売会社,建材販売会社,通信販売会社など,一般の人々を対象として営業活動を行っている企業であれば,どんな業種であれターゲットになると考えたのです。一般顧客を相手にしていない商社であっても,取引先にいる社員は当然,シャープ製品のユーザーになりうるわけですから。こういった事業者にも積極的に働きかけました」。

 開発推進部が発足したのは,今からおよそ30年ほど前。当時,提案営業というスタイルは家電業界にはなく,肝付さんほか数名の部員が手探り状態でスタートさせた事業に過ぎない。しかし,提案を受けた企業にとっては自社の業績アップにプラスになる話。断る理由はなかった。提示された「3年間で全国に新しい販売チャネルを開発すること」という目標は,余裕を持って達成できたという。

 この開発推進事業は現在も継続されており,シャープの販売戦略を支える大きな柱の一つとなっている。そして,この体験が肝付さんに,定年後はこれを事業としてやってみようという気持ちを起こさせる。

 「そうはいっても,独立したら,果たして自分の経験や能力を買ってくれる会社が見つけ出せるかどうか不安でした。しかし,幸いなことに,シャープにいた頃におつきあいのあった企業3社からすぐに仕事の依頼をいただくことができて,何とか順調な滑り出しとなりました。業務委託契約を結んだ会社における営業活動でも,シャープ時代の人脈が生きています。ありがたいことですね」。

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