2005/07/07
年金カットされない働き方
リタイア世代にとって,年金は大きな関心事だ。ご存知のように,60歳から受け取る厚生年金は,退職後に働いて厚生年金の加入者になると,賃金に応じて年金を減額される。これが「在職老齢年金制度」である。そこで,年金カットされたくない人は,次のような方法を取らざるを得ない。 (1)給与を低く押さえる (2)短時間勤務で社会保険に加入しない 年金との関係でも,短期間労働を選べる派遣は有利な働き方をいえるだろう。しかし,この制度はフルタイムで働きたい人には不利だ。また,年金が減らされることによる労働意欲の減退,社会保険に加入しないという不公平,企業が高齢者の賃金を抑制する口実に使うことなどから問題があると言われている。また,本当にやりたい仕事に就く機会,生きがいを見つける機会を奪うことにもなりかねない。 派遣で働く心構えと極意
リタイア世代にとって派遣はいいことが多いように思えるが,それは希望に合った派遣先があった場合のことである。紹介を受けた中に,必ずしも希望どおりの会社があるとは限らない。大事なことは,自分はどの条件を最優先するか,譲れないのはどの条件か,プライオリティを考えておくことだ。 リタイア後は,自分自身のために,自分のしたい仕事をするというのが一番。そのためには,自分自身の今後の生き方やライフスタイルを決めておかなければならない。賃金だけで,とにかくフルタイムがいいと選んだ結果,意に染まない職種や条件を働くことになってしまったというようなことは避けたいものだ。 中高年世代には人当たりのよさ,経験の豊富さ,応用力などいい点もあるが,問題点も少なくない。ソフトパワーのサイトには,成功例と共に,能力不足,突然の退社など過去20年の「中高年シニア派遣の失敗例」 パソナ・渡辺哲也シニア事業部長は「企業がシニア採用で気にするのは,昔の職場や自分のやり方に固執する,協調性に欠ける,態度が横柄な点」と言う。特に,中小企業やベンチャーに派遣される場合が問題だ。そこで,パソナでは「郷に入りては郷に従え」,「自らが一プレーヤーとして」,「独走は禁物です」などを記載した“心構え10か条”を配布している。 リタイア後の就業には,こだわるところとこだわりを捨てなければならない部分を見極めることが必要だ。経験に裏打ちされた確かなスキルにはこだわってもいいが,過去の栄光,ほかでは通じないノウハウ,意味のないプライドなどは捨てなければならない。教えを請う勇気,新たな仕事への興味,今までと違う経験を楽しめるという余裕。個人としての魅力をどう出せるかもリピートされ,シニア派遣が定着する要因となるのだろう。 派遣にも新しい試みがどんどん生まれている。パソナは本社ビルの地下に,植物工場を作り,就農支援の場を確保している。これは,大変面白い取り組みなので,また,詳しく紹介したい。「今後は,企業だけでなく,地域での活動や個人で労働力を求める人への派遣も行われるようになるのではないか」(渡辺部長)。確かに,経理や営業の専門家がいなくて困っているNPOや個人事業主は多い。派遣で働く人と働く場の開拓は,思いがけない広がりも見せそうだ。 (松本すみ子=シニアライフアドバイザー)
松本すみ子(まつもと・すみこ)
早稲田大学第一文学部東洋史学科卒業。IT業界で20数年,広報,販促,マーケティングを担当。この間,職場での心のケアに関心が向き,産業カウンセラーの資格を取得。電話によるキャリア相談や心理相談などのボランティア活動を開始する。これがきっかけとなって,シニア世代の動向に注目。シニアライフアドバイザー資格を取得し,1999年にはIT系企業を退職。2000年,シニアの動向研究とライフスタイル提案,コンサルティング,執筆などを主要な事業とする有限会社アリアを設立し,代表取締役に就任。2001年8月より,リクルートのガイドサイトAll About Japanで「シニアライフ」のガイドを始める。2002年9月,独自に,シニア世代の仲間づくり・活躍の場づくりの会「おとなのオピニオンコミュニティRyoma21」を創設。Webサイト上での情報提供とサークル活動などを開始する。同会は,2004年3月,NPO法人おとなの暮らしと仕事研究所として認可された。現在,日経BP社の情報サイトnikkeibp.jpにて「団塊消費動向研究所」を連載中。著書に,「自分分析!つまらない毎日なら『好きな』ことで独立しよう」,「心理系の仕事を見つける本」などがある。
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