
![]() 2007/07/30
沢木耕太郎の『深夜特急』。団塊世代の著者が20代で経験した未知なる旅。それを記録した伝説のルポルタージュに、心踊らせた人も多いのではないだろうか。とはいえ団塊世代にとっては、自由な旅など夢のまた夢とあきらめがち。 そんな中、定年を期に、たった一人で350日に及ぶバックパッカーの旅に出た男性がいる。「深夜特急」ならぬ「シニア特急」の旅だと笑う先輩に、その魅力を聞いてみた。 元新聞記者の旅へのあこがれ
森哲志(63歳)さんは、元新聞社社会部記者。浅黒く日焼けして締まった頬に長い髪を後ろで結び、いかにもフリーのジャーナリストというスタイルだ。とはいえ、数年前までは髪を七三に分け、スーツで武装したビジネスマンだった。若くしては日航機墜落、豊田商事事件、リクルート事件など、時代を震撼させた数々の事件を取材し、その後は管理職としてストレス社会に身を置いてきた。 「国内はすべて仕事でめぐったものの、旅とはいえません。逆に、社会的責任があるからストレスが多かった。また、家族旅行も妻のお供といった感じで、自分のための旅というのはしたことがありませんでした」と、森さんは現役時代を振り返る。しかし、事件や取材に追われる中で、旅へのあこがれは強かった。かの『深夜特急』を枕元に置いて、夜中にボロボロになるまで読んだのだという。 「学生時代に大きな旅ができなかったこともありますし、マスメディアが伝える世界情勢を、この目でじかに確かめたかったという理由もあります。いつか沢木耕太郎のように、アジアを横断する一人旅に出たいと思っていたんです」。森さんのまなざしは熱い。 バックパッカーの旅というと、危険や不安がつきもので、若さから来る勢いがないと乗り切れないと考えがち。だが、時間の制約を受けず、無理をせず、目的に向かって自由に行動できる環境は、リタイア世代にこそふさわしい旅のスタイルともいえる。
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