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男の一人旅事始め<その3>〜同志に出会えるマニアが集う宿〜

清張か正太郎か,作家気取りで文学の舞台へ
文庫 松本

 団塊男性にファンが多い作家といえば松本清張と池波正太郎。彼らは綿密な取材旅行によって,独自の作品を作り上げていった。彼らのファンが通う宿がある。それが作家の愛した宿だ。本を読み,宿の書斎やバーカウンターに作家の影を追ってみる。また,文庫本を片手に作家の足跡をたどる旅を楽しんでみてはいかがだろう。一人旅ならではの,想像力がかきたてられること間違いない。

 松本清張は,全国各地の郷土史,民俗信仰,伝説を取材に,多くのミステリー小説を執筆した。丹後半島など西日本を舞台に,浦島伝説と子午線を結ぶミステリーを描いたのが『Dの複合』。

 この小説の執筆にあたって,長期滞在した宿が,丹後半島の木津温泉にある「ゑびすや」という老舗だ。大正モダンと昭和レトロを絡み合わせたような本館には,清張が宿泊した部屋と書斎がある。作品の中にも「浦島館」として登場する。書斎は元々は出窓程度だったらしいが,日差しがやわらかく降り注ぎ,なかなかに居心地のいい空間だ。

ゑびすや 丹後半島 夕日が浦 ゑびすやの夕食

 宿では,長期滞在する大作家の対応に苦慮したらしいが,気取らない清張は,地元の家庭料理を出してくれればいいと言ったそうだ。宿では「松本清張の部屋に泊まるプラン 」も企画している。宿の食事は丹後半島らしい海の幸で彩られるが,イカとタマネギの煮物や,ブリ大根など家庭料理も清張の愛した味として登場する。

 作中で主人公たちは,天橋立,丹後半島,和歌山など,「僻地に伝説をさぐる旅」に出る。それはまさしく,清張がめぐった旅でもある。その足跡をたどる一人旅もおつなものである。


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