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2005/10/03
その様子から,かつての無趣味で出不精だった姿を想像するのは難しい。佐藤さんはいかにして趣味に目覚めたのだろうか。 趣味は〝家でじっとしていること〟
2001年9月,上高地。まだ暗いうちに山小屋を出発した一行は,河童橋に着くと思い思いの場所に腰を下ろし,絵を描き始めた。彼らは,スケッチ教室を主宰する画家の岩本芳雄さんと生徒たち。その中に,4月から絵を習い始めたばかりの佐藤さんの姿があった。 澄み切った川と空気と穂高山――。スケッチブックに筆を走らせながら,佐藤さんは,「早起きをしてこんな自然の中で絵を描いている自分が信じられない…。半年前にはまったく想像できなかったな」と,同行の奥さんにしみじみ語りかけた。 何しろ,その少し前まで佐藤さんの辞書には“趣味を楽しむ”という言葉は存在しなかったのである。「仕事以外の,やらなくてもいい面倒なことは一切やらない主義。趣味は?と聞かれれば〝家でじっとしていること〟と胸を張って答えていたくらいですから」。 そんな様子に危機を感じたのは,当の本人よりも奥さんのほうだった。「このまま放っておいて,〝ぬれ落ち葉〟のあげく,ボケたら困る。夫にはいつまでも元気で生き生きとしていてもらいたい」――。おそらく,そう考えたであろう奥さんは,夫に趣味を持たせるために一肌脱ぐことを決心する。 「何かやりたいことはないの?」。「うーん,何かって言ってもなあ…」。「何かあるでしょう。昔得意だったこととか」。「じゃあ・・・絵,でも描いてみるかな」。佐藤さんがそう答えたのは,小中学校時代に図工や美術が好きだったことを思い出した。ただそれだけの理由だった。だが,奥さんはさっそく行動を開始した。
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