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充実生活見つけた
ジャズボーカリストになった社長<その2>
2005/09/12

 前回は,荻野さん(66歳)とジャズボーカルとの出会いを紹介した。社長ならではの激務,プレッシャーから解放され,もう時間に追われる生き方を重ねたくはないと思ったとき,ふと,目の前に現れたのがジャズボーカルだった。

 レッスンを重ね,いまでは生バンドをバックにステージをつとめるほど。ジャズの世界は,荻野さんの第2の人生に,どんな広がりを与えているのだろうか。

花開いた基礎レッスンの苦しさ

 6カ月間の基礎レッスンは,ト音記号の書き方から譜面の読み方,キーを変えて譜面を書き換える作業,発声練習まで,ありとあらゆる訓練でみっちり鍛えられた。「マーサ三宅ヴォーカルハウス」では,与えられた課題がクリアできないと,授業全体が先に進まない。荻野さんは最初,譜面が読めなかった。ほかの受講者はほとんどが若者で,苦もなくクリアしていく…。荻野さんが必死に譜面と格闘している間,他の人は黙って待っているしかない。申し分けなさと情けなさでいっぱいだ。

荻野さん

 地位もプライドもあった人が,こういう状況を耐えるのは難しい。事実,この段階でリタイヤしてしまう年配者は多いという。しかし,荻野さんはくじけなかった。自宅で補習をしたり,発声練習をしたりと努力は欠かさなかった。それはやはり,「社長業の大変さ,辛さに比べたら,自分が恥かくことなんて,何てことはない」という思いがあったからである。

 こうして,ようやく6カ月間の基礎レッスンを終えった。いよいよ個人レッスンとなって,好きな歌を習える時がきた。荻野さんは,このとき,みっちり鍛えられた基礎があったからこそ,ジャズボーカルが成り立つということを理解したという。「ジャズでは歌う時に,歌の中に自分でリズムを作ったり,アドリブを入れていったりすることが大切なんです。でもそれは,基礎ができていなければできない。カラオケで歌を歌うのとはまったく違います」。

 バラードは,アップテンポの曲より格段に難しいという。「スローテンポな曲は,ゆっくりだから簡単に思えるでしょう? 実は逆で,アップテンポの曲のほうが歌いやすいんです。バラードはシンプルなだけに,上手下手がすぐにわかってしまう。例えば,有名な“スターダスト”という曲がありますが,誰でも知っている曲でもあり,歌う方はかなり神経を使います」。

 しかし,荻野さんには武器がある。「ジャズソングはほとんどが恋や愛の歌です。私の年齢だと,さんざん経験してきた感情ですからね,情感を込めて,味わい深く歌うことができます」。若い人たちはリズムや音の取り方がうまくても,ジャズが必要としている人生の奥深さや味わいを出すのは難しい。年齢を重ねたことが逆に有利になるわけだ。荻野さんは,「マーサ三宅ヴォーカルハウス」の在校生400名の中で「新人賞」を受賞したこともある。

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