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店の人が至極気持ちいい店〜サカナ系定食屋の横綱

2006年6月26日

この連載もこれが最終回。これまで多くの美味しい昼メシ屋を紹介してきた。先週に引き続き、ボクが「定食屋の横綱」と思っている店をご紹介して〆たいと思う。先週は「揚げ物系定食屋」として「三河屋」をご紹介したが、今週は「サカナ系定食屋」としてボクが横綱と思っている店、築地の「魚竹」をご紹介しよう。

こんな風に偉そうにご紹介するのがちょっとおこがましい気持ちはある。だってボクの友達にはこの店に20年以上毎週2回は通っている魚竹通もいるし、先輩方には25年以上通っている魚竹評論家もいる。ボクも20年以上通ってはいるが、それらの方々に比べればまだまだヒヨッコなのである。紹介するなんて10年早いって感じなのだ。まぁそれでも、読者の中には知らない方もおられると思うのでご紹介したいと思う。

先に言っておくが、“魚”だけを取り上げると、ここより上質な魚を出す店は他にもたくさんあると思う。焼きの技術だって割烹や料理屋の方が上だったりするだろう。でも、定食の完成度、ホスピタリティ、サラリーマンたちをホッとさせる雰囲気、満足感、コストパフォーマンスなどを考えると、やっぱり横綱だなぁと思うのである。

ここの名物は「鮪のなかおち」。まだ“中おち”があまりポピュラーじゃなかったころからずっと出していて、その質にまずは驚いて欲しい。でも、ボクが好きなのは焼き魚。季節によって魚は違うが、量も質も満足できる。なんというか、上品すぎず下世話すぎず、気軽に食べたい昼メシにちょうどいい焼き魚なのである。わかるかな。これより上品で上質な焼き魚は昼メシにはTOO MUCHなのである。そのギリギリの程の良さ。それが感じられる焼き魚なのだ。

で、ご飯が美味い。とても上手に炊けている。大盛りとか、やや大盛り、とか注文もつけられる(やや大盛りは「ややおも」と略される)。おかわりもできる。ご飯がうまいのは定食の基本だよねー。味噌汁も程が良い。漬物もちょうどいい。そう、すべてにちょうどいいバランス。追加できるポテトサラダや納豆なんかも、なんかちょうどいい。このバランス感がサラリーマンたちの人気を集めている理由なのだろう。

そして、カウンターの中に立つご兄弟の格好の良さもこの店の魅力だ。実に佇まいがいい。いかにもうまいものを出しそうな顔と身体をしているのだ。しかも丁寧親切。勤勉謙虚。すべてに気持ちいい。ついでに女性陣も元気で気持ちいい。前回の「三河屋」もそうだったけど、店の人が至極気持ちいい店って、結局いい店なんだよね。

カウンター10席ほどしかないので、昼時は当然ながーい列ができる。13時でも13時半でも列ができているだろう。でも並ぶだけの価値がある名店だ。週2回20年以上通う人の気持ちがわかる。あなたもきっとわかる。ぜひ、行ってみて下さい。

ということで、約1年、全58店紹介してきたボクの連載もこれでおしまい。 みなさん、「いつもの店」、「近くの店」に行くのをやめて、週に数回、ちょっと足を延ばして昼メシ開拓してみませんか? 同じような日常に埋もれがちな好奇心が蘇り、きっと新たな展開が開けると思いますよ。

どこかのお店で会ったらお声掛けください。では。

店データ

魚竹
東京都中央区築地1-9-1
TEL 03-3541-0168
11:00〜14:00/17:00〜22:00
土日祝休
築地警察の角から歩いて数十メートル。

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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