ミカサ(大船)〜湘南の地の完成度高いオムライス!
オムライスというと、チキンライスをオムレツ状に包んだ形状を思い浮かべる人が多いだろう。楕円形の卵の中にチキンライスが入っている感じ。赤いケチャップやデミグラスソースがかかったその黄色い生地をスプーンで割って、中から湯気とともにオレンジがかったチキンライスが現れるときのワクワク感は他の食べ物にはないものだ。
でも、ボクはそういう系統のオムライスには少し不満を持っている。薄く固い生地で包む系のオムライスは、卵の味や香りが足りないと思うのだ。以前このコーナーで紹介した「レストラン・チャモロ」は、卵がふわっふわの半熟状態でライスを包んでいる。このように、なんというか 「卵とチキンライスがしっかり競い合っている感じ」がボクの中ではとても重要。薄い生地では物足りない。半熟の卵と鶏の香りがきちんとするチキンライス。そのバランスを食べるのがオムライスだと思っている。
さて。そういう意味で、大船に1軒、秀逸なオムライスを出してくれる洋食屋がある。それが今日ご紹介する「ミカサ」。もともとは「Mi-Casa(My Home)」という店名だったらしい。雰囲気もサービスもとてもいい地方の名店である。
でも、1937年創業のこの店、名物は「カツメシ」だという。焼き飯の上にキャベツとカツが載り、その上にまた焼き飯が重ねられたそれは、「ミカサが生んだ炒め飯とトンカツの合体」だそうだ。一列にトッピングされたグリーンピースがかわいらしい。
カツメシには由来がある。この店、大船に松竹撮影所があったとき、映画人でとても賑わっていた店らしい。小津安二郎、木下恵介、鶴田浩二、淡島千景、岡田茉莉子といった監督やスターたち、そしてスタッフたちが通った店。そこで生まれたのが名物「カツメシ」だ。たぶん「この店うまいから毎日来たいけど、連日徹夜撮影の中、“ナイフ フォーク”でちょこまか食べるのはかなわん。“フォーク1本”で手早く食べられるのを作ってくれや」みたいな要望に応えたものだと思われる。忙しいときも5分でかきこめ、しかもうまい。そんなユニークなメニューなのである。
古い映画人たちが愛したメニュー「カツメシ」。惹かれるでしょう? でもでも、ぜひともオムライスも食べてみて欲しいのだ。
ここのオムライスは独特。オープンタイプというのかな。チキンライスの上にオムレツが載っている。そう、チキンライスが普通に広がった皿の上にオムライスがどんっと載っているのだ。え? 卵とチキンライスの相性を食べるのがオムライスと言っておきながら、それじゃ混ざり合わないじゃんって?
いえいえご同輩。これが実に秀逸なのだ。
載っているのは、ちゃんと完成されたオムレツだから、卵の香りが中に閉じこめられている。それをスプーンで崩すと、半熟状になった卵がチキンライスにとろーりとしなだれかかるのだ。ベストな状態の卵が、それだけで食べてもおいしいチキンライスとそこで混ざり合いコラボする。そのバランスが実にいいのである。
そのコラボを食べ、次にコロコロ入っている鶏とともにチキンライスを味わい、今度は卵のみを味わい……と様々な味が楽しめるのもうれしい。これは「オムレツだからこそ」のもの。チキンライスも卵から独立しているから、混ぜる部分と独立している部分を自分の裁量で混ぜられる。
キノコたっぷりのブラウンソースとケチャップの両方が出てくるので、 つけ比べながら楽しめるのもうれしい。実に完成度の高いオムライスである。もし湘南に行かれることがあったら試してみてほしい。JR 大船駅から元松竹方面に歩いて5分ほどである。
店データ
レストラン・ミカサ
鎌倉市大船2-20-36
TEL 0467-46-2737
11:30〜14:30/17:00〜21:30
土日通し営業
無休
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