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鳳雛チムタク(渋谷)〜韓国で大流行した料理をランチで知る(1)

2006年4月17日

ランチ時に人形町に行くと、たいてい「玉ひで」の長〜〜い行列にぶち当たる。ここの親子丼はとても有名で、ボクも一度は食べてみたいのだが、あまりの行列に怖じ気づいてしまって、まだ食べたことはない。

わりと回転は早いよ、という説も聞くのだが、10人20人ならともかく、50人、いや7、80人は並んでいたりするのである。こりゃアカン。ここまでくると、並ぶ気がしない。並ぶ人の気が知れない。というか、昼休みがそんなに長くないサラリーマンは、まず無理と言っても良い。がっくし。いつか一度は食べてみたいけどな…。

ところが、実はあんまり“がっくし”していない。むしろ逆。喜んでいる。今日も「玉ひで」はすごい行列だぁ、とほくそ笑んだりする。みんな「玉ひで」に行ってくれるおかげで、ボクの愛する周辺の小さな店が混まずに済むのだ。今日はどの店に行こうかなぁ…。

いくつか選択肢がある中で、比較的高い確率で選ぶ店がある。それが今日ご紹介する「小春軒」。明治45年開店の老舗洋食店である。くしくも「玉ひで」の並びにある。

なんでも初代の小島さんが「はる」さんと結婚したので「小春軒」というらしい。もうそれだけで、ほんわかのどかな気持ちになりません? 「下町に小さな店を持つ」というふたりの愛と希望の結晶が、平成のこの世に至るまでずっと続いていて、そこで昼メシを自分が食べている不思議、みたいな感じ。ボクはいつもそれだけでシアワセな気分になったりする。

いま料理を作っているのは4代目。メニューはたくさんあって、いっつも迷うのだが、ボクはメンチカツライス(750円)かカツ丼(1200円)のどちらかを頼むことが多い。

メンチカツは味も形も上品至極。たいていはメンチカツを食べると、少し胃にもたれたりするのだが、ここでは、そうなったことがない。とても丁寧に作ってあり、香りも高い。この店の真面目な姿勢が滲み出たメンチカツなのだ。ただ全体に量が少なめなので、ちょっと物足りない方もいるかもしれない。そんな場合は、コロッケの単品追加(1個130円)も可能。これも美味いのでオススメする。

そして、カツ丼は実に特徴的。見た目でこれがカツ丼だと思う人はまずいない。フタをあけるとまず野菜が現れる。デミグラスソースで炒め煮にされた、ピーマンやニンジンやジャガイモだ。うーむ、これは何丼だ? 野菜の下に、なにやら白い物体が見える。それはなんと目玉焼き。卵でとじずに半熟目玉焼きが載せられているのだ。そしてその下にやっとカツが見えてくるのである。

これがですね、独特の美味でクセになる。野菜の旨味がカツと合わさって、カジュアルな美味に仕上がっているのである。山県有朋のお抱え料理人から独立した小島さんの本格的カツ丼に、きっと「はる」さんが下町家庭っぽいアレンジを提案したんじゃないかなぁ、とか想像しながら食べると、より美味く感じる。

店のモットーが壁に貼ってある。「気取らず、おいしく」。気取らずおいしい、小島さんと「はる」さんのカツ丼。ぜひご賞味あれ。

店データ

小春軒
東京都中央区日本橋人形町1-7-9
TEL 03-3661-8830
11:00〜14:00/17:00〜20:00(土曜昼のみ〜13:30)
日祝休

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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