このページの本文へ
ここから本文です

手打ち蕎麦 成富(築地)〜2種類の蕎麦粉を味わう

2005年11月28日

ボクにとって蕎麦とは“香り”である。蕎麦の実の香りがプウンと香る蕎麦が好き。もちろんコシとか喉ごしとかも大事だけど、優先順位をつけるとやっぱり香りが大事かなぁ。香らない蕎麦を食べるくらいなら、うどんの方が数千倍好きである。コシや喉ごし、食感などはうどんに軍配を上げたい。つまり、ボクの中では、蕎麦は香り、食感ならうどん、という感じなのである。

で、蕎麦の香りを重視すると、「蕎麦の仕入れと保管」に行き着く気がする。もちろん店主の蕎麦打ちの腕も重要だけど、それよりも大きくものを言うのが「仕入れと保管」、そして「自家製粉」であること、だと思うのだ。適切な時期に適切な地方の適切な生産者から仕入れて、保管をちゃんとし、店に出すその日に自家製粉する。そんな蕎麦屋は、腕のレベルがまあまあでも、香りについては相当満足いくはずだ。このごろでは自家製粉の店も増え、「本日の蕎麦粉」を表示している店も増えた。香り重視派のボクとしてはうれしい限りなのである。

さて、今日ご紹介するのは築地の「手打ち蕎麦 成富」。この店をご紹介するのは訳がある。オーダーの仕方にも寄るのだが、2種類の蕎麦粉を味わえる店なのである。1回の昼飯で2タイプの蕎麦の香りをかぎ分けて楽しめる。香り重視派としては見逃せないではないか。

蕎麦屋っぽくないモダンな造りの小さな店なんだけど、入口に「今日の蕎麦 茨城産 北海道産」とか貼ってある。おお、ブレンドするのかな、と普通は思うのだが、この店は2種類打ち分けているのである。「せいろ」(800円)と「追加せいろ」(600円)を頼んでみよう。この前ボクが行ったときは「せいろ」が茨城産。で、「追加せいろ」が北海道産の新蕎麦だった。1回で2種類の蕎麦粉を味わえるってお得だし実に楽しい。

茨城産は枯れた印象の蕎麦で、色はグレー。香りは奥の方にほのかに漂い、バランスがちょうど良い。北海道産の新蕎麦は水分も多く粘りも強い。しっとりした緑色。香りはさすがにグッと強く主張する。あぁ、蕎麦粉によってこんなに違うんだなぁとうれしくなる。特に蕎麦初級者や中級者にとって、こういう食べ比べは蕎麦リテラシー(?)のアップにもつながるだろう。

つゆは塩分がきつめながら、蕎麦とよくマッチしていて美味。たね物もヒトのを見ている限りではなかなかいい感じ。そば湯も蕎麦粉を溶き足すタイプのもので濃厚だし、接客も感じがいい(いい意味で素人っぽい)。そしてなんといっても、2種類の蕎麦粉を安価に楽しめるのが秀逸だ。そう思いません? ただし、2種類の蕎麦を出すことをメニューにハッキリ書いて保証しているわけではないのでご注意を。仕入れにも寄るだろうし、運もあるとは思います。

店データ

手打ち蕎麦 成富
東京都中央区銀座8-18-6
Tel:03-5565-0055
11:30〜15:00/18:00〜20:00(土曜昼のみ)
日祝休
築地の朝日新聞社と竹葉亭のちょうど真ん中くらい、銀座中学校のL字型の路地にある。

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る