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ルー・ド・メール(神田)〜完成度の高い、欧風カレー

2005年11月14日

ボクはどちらかというとインド風カレーが好きで、欧風カレーはあまり食べに行かない。タイ風カレーも好きで食べるが、あえて欧風カレーを選ぶことは少ない。なんでだろうな。たぶん欧風カレーの重厚な旨みより、インド風やタイ風の爽快かつスパイシーな味の方が好きなのだろう。

もともとカレーはインドが発祥であるが、日本へはイギリスを経て明治初期に伝わってきた。このため日本では、インド料理ではなく西洋料理に分類されることが多かったので、その後家庭に広まったカレーライスも、基本的には西洋料理とされている。インドのスパイスがイギリスに伝わって、フォンから作るイギリスの伝統的シチューと合体し、肉やじゃがいもが入ったあのカレーとなったわけですね。コトコトと煮込んで旨みとコクを出す。いわゆる(日本の)家庭風カレーは、欧風カレーがそのもとなのである。見た目的にはドロッとしていて、ライスの上に乗るタイプ。

それに対してインドカレーは、昭和初期に日本へ伝来した高級料理だったそうである。本場のインドカレーが一般に普及したのは大阪万博からだという説もある。当時インド人が作るインドカレーが話題になったのはボクも覚えている。スパイスの香りが強く漂い、見た目がシチューに近い欧風カレーとはずいぶん違う。シャバシャバでさらさら。とろみがないからライスを通り越してお皿に溜まる。直接的にスパイスが香ってくる感じ。

で、繰り返しになるが、ボクはインド風の方が好みなのである。もちろん、家庭のカレーや喫茶店のカレーも実は嫌いではない。庶民的なあの味がどうにも欲しくなって、たまになんでもない喫茶店に飛び込んだり、市販の安いルーを買って自分で作ったりもする。

ただ、重厚な高級欧風カレーには、そんなに“快感”を覚えなかったわけである。が、それでもいくつか好きな店を持っていて、そのうちの一店がこの店「ルー・ド・メール」(海のオオカミ=スズキという意味のフランス語らしい)。欧風カレーの完成型として、知っておいて欲しい一店だ。

「ルー・ド・メール」は、京橋「ドン・ピエール」の系列店で、同店の鈴木シェフが作っている。この「ドン・ピエール」の欧風カレーは、10年前くらいに、雑誌「dancyu」の欧風カレー部門でグランプリに選ばれていたくらい有名だったと記憶している。そのシェフが腕によりをかけて作ったカレーがこの店で食べられる。

特選ビーフカレー(1500円)がオススメ。量が少なめなので、男性は大盛り(+200円)の方がいい。極限まで柔らかく煮込まれたビーフ(でも煮くずれてない)に奥深いスパイスの香りが絡んでいて、これぞ日本の洋食独特のカレー、といった趣。完成度がとても高い。北海道産黒毛和牛カレーセット(1000円)もあるので、特選ビーフカレーが高いと思われる方はそちらを。

このカレーの真価は食べ終わって5分後くらいに表れる。あまり水などを飲まず、お勘定をしてそのまま神田の街に出て欲しい。少し歩いたあたりで、ふと口の中に複雑なスパイスの芳香が漂っているのに気付くだろう。食べている間からスパイスが強く主張するインド風とはずいぶん違う、時間差で表れる、含羞あるカレーの香り。この“快感”がこの店を再訪させたくなるのである。

店データ

ルー・ド・メール
東京都千代田区内神田2-14-3
Tel:03-5298-4390
11:30〜14:30(日 12:00〜14:30)
17:30〜21:00(日 17:30〜20:00)
土祝休

ちなみに「ドン・ピエール」のカレーは東京駅でも気軽に食べられる。
「ドン・ピエール エクスプレスカレー」
東京駅八重洲北口1Fキッチンストリート内
Tel:03-5288-7551
11:00〜23:00
無休

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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