お座敷洋食 入舟(大森)〜八十歳の女性が接客する大正13年創業の洋食店
昭和なお店紹介が続いたと思ったら、今度は大正かよ! と、ツッコミが入りそうであるが、臆せずご紹介したい。というか、秋になってから、ちょっと懐古趣味的になっているのは確かかも。そういえばこの11月5日には漫画「三丁目の夕日」を映画化した「ALWAYS」も公開されましたね。昭和33年を相当リアルに描いているこの映画、懐古趣味なボクは相当楽しみにしている。
で、今回ご紹介する「お座敷洋食 入舟」は、まさに「三丁目の夕日」的な店なのだ。ただ単に店自体が古いだけでなく、店がある“横町”の雰囲気が相当「三丁目の夕日」的な下町なのである。もともと大森のここらへんは三業地跡地(※)であった。
※三業地とは置屋・料理屋・待合の三つの施設がある花街のこと
東京オリンピックのための港湾整備で、漁業権を放棄させられたときの補償金で、当時はすごく賑わったと言われているのだが、いまはその面影もなく、わりと寂れている。昔は芸者さんたちもハイカラな洋食を食べに来たりしたのかなぁ、と思いながら散策していると、思いがけず昭和な佇まいの家が出てきたり、ネコが塀の上に寝てたり、路地からおかっぱ頭の子供が飛び出してきたりする。うわー、本当に三丁目の夕日の世界だ…。
「入舟」はそういう立地で大正13年からずっと営業してきていて、この地の栄枯盛衰をしっかり見てきている店だ。モルタル造りの古い一軒家で、1階は、当時としてはさぞやハイカラだっただろう的食堂。別玄関から入る2階はお座敷で、それこそ最先端だったであろう“お座敷洋食”が食べられる。もうね、この内装や雰囲気がまず大のご馳走。
床や壁やテーブルに、長い時間がいい感じで染みこんでいて趣ありまくり。調度品も昭和そのものでそれぞれ懐かしい。壁に掛けられた額などからもあの頃の匂いが漂う。あぁうれしいなぁ。20代30代は「渋っ!」と喜ぶだろうし、40代以上は「懐かしすぎる〜!」と静かに目を閉じてしまう感じなのだ。
どっかり腰を落ち着ける2階の座敷も相当いいのだが、ボクは1階のテーブル席をオススメする。なぜなら、現在1階で接客にあたるおばあさんは、聞けば大正14年生まれの80歳(!)。着慣れた割烹着姿で、姿勢良く、明るくテキパキ接客してくれるその格好良さ。その姿がこれまた大のご馳走。彼女の笑顔は、この店の美味しさの半分を占めていると言っても過言ではない。ぜひ1階で食べてみて欲しい。
店は古いが清潔至極。黒板やメニューの表記も丁寧かつ親切で、店の姿勢がうかがわれる。たとえば、「生ビールサーバーは毎日洗浄しているので、いつでもおいしい生ビールをどうぞ」と黒板にあり、昼だということを顧みず思わず飲みたくなってしまう。日替わりランチもとても美味しいし、入舟ライス(炒めご飯)、カレー、ハヤシ、オムライスなどの一品も捨てがたい。魚のフライやコロッケなどを盛り込んだ入舟ランチもお得な感じ。とにかくベーシックで懐かしい日本の大衆洋食がここに生き残っている。
JR大森駅から東に歩いて10分弱。品川水族館からも程近いので、水族館の行き帰りにもいいかもしれない。夜にお座敷で、ゆっくりとコースをいただくのもオススメだ。
店データ
お座敷洋食 入舟
東京都品川区南大井3-18-5
Tel:03-3761-5891
11:30〜14:00/17:00〜21:00
日祝休
すぐ近くに「布恒更科」(東京一というヒトがいるくらいの蕎麦の名店)がある。
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